第182章 もう一度気持ち悪いことを言ったら蹴るぞ!

辰は一撃でKOされ、柔らかな髪が目の前を掠めていった。白い柳のように、ふわりと地面に転がって二回ほど回転した後、動かなくなった。

鈴木瑠璃は彼に向かって歩み寄り、うっかり弟分を蹴り過ぎて何か問題が起きたのではないかと心配になり、手を差し伸べた。

「立てる?」

瑠璃はふと気づいた。少年の黒いマスクが片方の耳から外れていた。

彼は素早く顔を横に向け、マスクを直したが、瑠璃は一目で辰の正体を見抜いていた——白石塵?!

「白石……」彼女は思わず名前を呼びそうになり、急いで周囲の反応を窺った。

二人はかなり離れていて、彼女だけが少年の素顔を見ていた。

白石塵は息を切らしながら地面から立ち上がり、目を輝かせてまるで自分の憧れのアイドルを見るかのように言った。「先輩すげえ!先輩マジ強いっす!いつになったら僕も先輩みたいになれるんですか?」

瑠璃:「えっと……」

金田館長は得意げに、何度も自慢してきたセリフを口にした——

「言っただろう、これが私の自慢の弟子なんだよ!辰、お前が大学四年になって先輩の半分でも強くなれたら、それはもう大したもんだぞ!」

漆黒の前髪の下から覗く少年の目は喜びに満ちていた。「館長、嘘じゃないですよね?本当に三年練習すれば、先輩と同じくらい強くなれるんですか?」

「さ、三年?」金田館長は驚きのあまり言葉を詰まらせた。「今、大学一年生なのか?」

白石塵:「そうですよ!」

金田館長は彼を上から下まで眺め、目を見開いた。「ずっと高校一年生だと思ってたぞ!!」

道場の他のメンバーも信じられないという目で彼を見つめた。

瑠璃は思わず笑いそうになった。

白石塵は身長185センチあるが、メイクを落とした素顔はかなり「幼く」見え、性格もエンターテイメント業界であの世間知らずの神様級イケメンとして知られる白石塵とは全く別人のようだった。

どうやら公の場での天然系イケメンキャラは事務所が作り上げたイメージで、今目の前にいる活発な少年こそが白石塵の本来の性格のようだった。

「先輩、WeChat交換しませんか?どうやって人を蹴るか教えてもらえませんか?」

白石塵は小さなファンのように、瑠璃の後をついて回った。