鈴木瑠璃は目を丸くして、無意識に彼を押しのけようとしたが、より強く抱きしめられた。
腰の後ろにあった手が徐々に上へと移動し、背骨、肩甲骨をなぞって首筋へと滑り、温かい手のひらが彼女の後頭部を支え、少しずつキスを深めていった。
「あああ——」ちょうど入ってきた島井凛音はその光景を目にして、手に持っていた布巾を床に落とし、顔を真っ赤にして目を覆った。
何が起きてるんだ何が起きてるんだ!ゴミを捨てに行っただけなのに、二人はどうして抱き合ってるんだ?展開が早すぎるだろ!
鈴木瑠璃の混沌とした頭の中で一瞬の冴えがあり、素早く一歩後ろに下がり、指で噛まれて痛む唇に触れ、潤んだ目で彼を睨みつけた。
しかし...この頬を赤らめ非難するような表情が、陸田子墨の目に映ると、さらに虐めたくなる衝動を掻き立てるだけだった...
瑠璃:「これはどういうこと?」
「礼には礼を返すだけさ」子墨は女性の少し腫れた唇の端を見つめ、優雅に微笑み、悪いことをした後の心の痛みなど微塵も感じていなかった。
瑠璃:「……」もしかして彼は乗馬場でのあの時のことを覚えているの?
凛音はゆっくりと目を開け、指の隙間から覗き見て、ボスの冷たい視線と目が合い、ぶるっと震えた。
やばい!ボスの良い雰囲気を邪魔しちゃったんじゃないか!
「もう遅い時間だ」子墨はゆっくりとコートを手に取り、静かな視線を瑠璃に向けた。「鈴木さんのお休みの邪魔はこれ以上しないでおこう」
「お兄さん、送るよ!」凛音は急いで子墨の後ろについて、ドアを開けて出て行った。
広々としたリビングで、瑠璃はゆっくりとソファに腰を下ろし、指で何気なくシャツのボタンを一つ外し、緊張した神経を緩めた。
ふと見ると、テーブルの脇に大きな箱があるのに気づいた。瑠璃はそれを手に取り、豪華で精巧な包装を開けた。
中には真っ白なドレスが静かに横たわっており、タグはまだ付いたままで、新品だった。
凛音がドアを開けて入ってきて、その箱を見て「あ」と声を上げた。「お姉さん、これはお兄さんがあなたに持ってきた顔合わせのプレゼントだよ」
子墨が持ってきたの?
瑠璃は両手でドレスを持ち上げた。真っ白で柔らかい生地は触り心地が良く、仙女のように優しいデザインでありながら、どこか色気も感じさせた。着れば間違いなく素晴らしく見えるはずだ。