第202章 取っておいて、次回瑠璃に返す

「木村佑……」

声が震えていた。

しばらくして、暗闇から磁性のある声が聞こえてきた。「瑠璃、大丈夫だよ。心配しないで」

鈴木瑠璃はすぐに尋ねた。「怪我してない?」

木村佑は少し黙った後、「していない。避けられたから」と答えた。

瑠璃は彼の言葉の真偽を疑った。「こっちに来られる?」

「うん」瓦礫が崩れる音がして、男の影がぼんやりと見え、ゆっくりと彼女の方へ歩いてきた。

「瑠璃、少し眠いから、先に休むよ。救助隊はもうすぐ来るはずだから」

佑は彼女の前に座り、ゆっくりと彼女の膝に頭を乗せた。

瑠璃は佑の様子がおかしいと感じ、震える手で男の頭から腕までを触った。

さらに下へ手を伸ばそうとしたとき、佑は手を上げて彼女の手首を握り、低い声で言った。「陸田謹言が言わなかった?僕は肌飢餓症なんだよ」

瑠璃はハッとして、内心で苛立った。「こんな時にまだ冗談言ってるの」

暗闇の中で男は無言で笑い、頬の半分を彼女の手に乗せ、ゆっくりと濃い睫毛を閉じた。

瑠璃は携帯を持っていなかったので、どれくらい時間が経ったのかわからなかったが、静かに眠りについた。

再び目を覚ますと、わずかな光が差し込んでいた。おそらく翌日の昼間だろう。

救助隊はまだ来ていなかった。瑠璃はしびれた足を動かして、「佑、お腹すいた?」と聞いた。

薄暗い光の中、男は軽く「うん」と返事をし、スラックスのポケットから高級な小箱を取り出した。

箱のブランドを見て、瑠璃は目を輝かせた。

スワロフスキーのクリスタル入りチョコレート、価格1万ドル……佑がこんなものを持ち歩いているなんて?

「本当は俗っぽいと思われるかと思って、渡さなかったんだ。今は役に立ちそうだね」佑は軽い口調で言った。

瑠璃は「え、どうして俗っぽいなんて思うの?」と言った。

スワロフスキーは女の子の夢じゃない?

佑は箱を開けた。中には七七四十九個のクリスタル入りチョコレートの小さな四角が入っていた。指先で五つ取り出して彼女に渡した。

瑠璃はそれを受け取り、彼も一緒に食べるものだと思っていたが、彼が箱の蓋を閉めるのを見た。

「食べないの?」

佑は優しい目で見つめ、「取っておくよ。次は瑠璃にあげるから」

瑠璃の心は「ドキッ」として、何かに射抜かれたような気がした……