第16章 宝石盗難

実際、永川安瑠はただ悪趣味なだけだった。彼女は人から「アンクル」と呼ばれて、真面目な顔でうなずく自分の姿が大好きだった。

それはもう最高に気持ちいいことだった。

「ふん、買えもしないくせに見栄を張って」管理員は安瑠がずっと目の前のショーケースを見つめているのを見て、この宝飾品が気に入ったけれどお金がなくて買えないから、せめてよく見ておきたいのだろうと思い、小声で嘲笑した。

安瑠は聴覚が鋭く、さらに管理員との距離も近かったため、その嘲笑の言葉をはっきりと聞き取ってしまった。

彼女は眉をひそめ、反論しようとした矢先、会場の照明が突然消え、ガラスのショーケース内の照明も暗くなってしまった。

「どうしたんだ?!」会場から驚きの声が上がり、突然の暗闇に恐怖を感じていた。

「警備、警備、急いで電源を確認しろ!予備照明を点けろ!」会場責任者が冷静に命令を下した。警備員たちは専門的な訓練を受けており、急ぎ足の音が多数聞こえ、すぐに会場全体が再び明るくなった。

安瑠の表情は少し険しくなっていた。先ほどの数分間の暗闇で、アメリカにいた時に密室に7日間閉じ込められた記憶がよみがえったからだ。ただ、ここは人が多いので、特に不快感はなく、少し落ち着けば気分も回復した。

「あっ!ここの宝飾品が!なくなってる!」安瑠が気分を立て直したところで、先ほど彼女を嘲笑した管理員の悲鳴が聞こえた。その内容を理解して思わず顔を上げると、目の前のショーケースが空っぽになっているのが見えた。

しかし、このショーケースは壊されておらず、こじ開けられた形跡もなく、鳴るはずのアラームも鳴っていなかった。

会場は再び混乱に陥り、臆病な名士や商人たちは少し後ずさりして、そのショーケースから遠ざかり、自分に飛び火しないことを祈っていた。

本来なら会場の宝飾品がなくなっても、自分には大した関係はないはずだった。しかし、困ったことに、なくなったのは彼女の展示作品だったのだ。

安瑠は心の中で中指を立てた。会場にはこれほど多くの高価な宝飾品があるのに、どうして彼女のものを盗むのか。その発想はどうなっているんだ?!