第17章 中傷

そして、この管理者は永川安瑠が何の後ろ盾もない人間だと見抜いていたからこそ、彼女に濡れ衣を着せる勇気があったのだ。この区域は彼女の担当で、ここにある宝石はどれも百万円を超える価値があり、今回の事件で彼女が賠償責任を負うことは間違いなかった。

だから管理者は、ずっとショーケースの横に立っていた安瑠に目をつけたのだ。安瑠が名もないブランドの服を着ていることから、彼女が名家のお嬢様ではないと判断し、大胆になったのだろう。自分が賠償するよりも他人に賠償させた方がいいに決まっている。

しかし、安瑠は彼女の考えを見透かしたかのように、状況を一瞬で逆転させる言葉を放った。

人々の視線は再び管理者に向けられ、軽蔑の色が浮かんだ。なるほど、罪を擦り付けようとしていたのか？

管理者は顔を青ざめさせ、すぐに反論した。「あなたについて回ったのは監視するためよ。あなたが入ってきた時から怪しいと思ったの。ここに来る人はみんな顔の利く人たちばかり。あなたは紛れ込んだのかもしれないし、会場の安全のために監視する必要があったのよ」

安瑠は笑った。彼女が入ってきた時から怪しいと思ったって？じゃあ彼女が係員に渡した招待状は大学入試の問題用紙だったとでも言うのか？

「あなたは私がやったと言い張っていますが、証拠を出してください。そうでなければ、名誉毀損で訴えることもできますよ」法律を学ぶ弟がいるおかげで、安瑠は法律の知識をかなり持っていた。確固たる証拠もなく判断を下すのは、名誉毀損と変わらない。

「さっきはあなたと私以外に、このショーケースの前にずっと立っていた人はいなかったでしょう？会場の照明が突然消えたのも、あなたの仲間の仕業かもしれないわ！」管理者は彼女の言葉を信じようとせず、安瑠がやったと言い張るつもりだった。そうすれば、巨額の賠償金は安瑠が支払うことになるのだから。

「あなたも言ったでしょう、私とあなたがいたって。あなたとあなたの仲間がやって、私に罪を着せようとしているのかもしれないじゃない？」安瑠は言い返し、少しも引けを取らなかった。それどころか、元々心虚な管理者よりも気迫で勝っていた。

「あなたは…」

「何を騒いでいるんだ？どうしたんだ？」セキュリティを連れて電源を確認して戻ってきた責任者は、ここで何か問題が起きていることに気づき、近づいて何が起こったのか尋ねた。