しかも、永川安瑠の学歴と資質からすれば、デザイナーのアシスタントに甘んじるなんて、まさに大材小用というものだ。
葉山逸風がさらに詳しく尋ねようとしたその時、彼のアシスタントが突然近づいてきて、彼の耳元で何かを小声で報告した。逸風の表情に変化はなかったが、その穏やかな瞳には冷たい光が宿った。
アシスタントが報告を終えて一歩下がり、逸風の後ろに立った。逸風は安瑠を見て言った。「申し訳ありません、永川さん。少し処理しなければならない用事があるんです。すぐに戻りますので、少しだけ待っていただけませんか?」
安瑠は眉をひそめ、少し考えてから頷いた。「わかりました、どうぞ」
彼女が残ったのは逸風のためではなく、武内衍の会話を邪魔しないように直接彼のところへ行くのを避けたかったからだ。それに、ここは衍のいる場所からも比較的近かった。
逸風は安心したように優雅な笑みを浮かべ、アシスタントを連れて立ち去った。
安瑠は逸風の背中を見つめ、澄んだ瞳に疑問の色が浮かんだ。そして突然、頭の中で白い光が走り、何かを思い出した。
「思い出した!」安瑠は小さく叫び、思わず片手でもう片方の手を叩いた。瞳に「なるほど」という表情が浮かんだ。「彼が千恵のお兄さんだったんだ。だから見覚えがあると思った」
以前、葉山千恵はよく彼女と兄の写真を安瑠に見せ、自分の兄がどれほど素晴らしいかを紹介していた。七、八歳の時に海外に留学に行ったが、千恵とはよくビデオ通話をしていたので、千恵にとって逸風は全く見知らぬ存在ではなかった。
逸風の背中をずっと見ていた安瑠は、背後から注がれる深い探るような視線に気づかなかった。
安瑠は一人になっても特に居心地が悪くはなかったが、不快だったのは、この会場の管理人が泥棒を見るような目で彼女を見ていることだった。
ガラスは強化ガラスで、センサーアラームも設置されている。彼女がここから何を盗めるというのだろう?彼女を神盜でも思っているのだろうか?
安瑠は心の中で白い目を向け、無視することにした。
しかし、この管理人は彼女に意地を張っているかのように、彼女がどこへ行っても後をついてきた。その警戒心に満ちた目つきに、安瑠は不快感を覚えた。
彼女の服装は確かに地味で、宝石や装飾品も身につけていなかったが、この管理人は見た目で人を判断するような人なのだろうか?