第119章 泥を塗る

永川安瑠はショーケースの中のデザイン作品を見つめていた。それは非常に精巧なブレスレットで、小さくて繊細、全体の主な色調は銀色とローズレッドで、この二色の組み合わせが視覚的な衝撃を与えていた。

「これは私のデザイン画です」永川安瑠は下方にあるそのデザイン画を見つめながら、一言一句はっきりと言った。

これは彼女のデザイン画なのに、どうしてここにあるのか、しかもニロの作品になっているのか？

安瑠の脳裏に、彼女がまだアメリカにいた頃、あの人たちに無理やり部屋に閉じ込められ、絶食絶水の状態でデザイン画を描かされた光景が突然浮かんできた。

あの人たちの貪欲さは決して満足することがなく、その顔つきは今でも鮮明に覚えている。

ニロのこのやり方は、あの人たちと何が違うのだろう？他人のデザイン画を自分のものだと主張して、より高い利益を得ようとしているだけではないか？

「そんなはずがないわ、これは明らかにニロのデザインよ、どうしてあなたのものになるの？」ユリは驚いて眉をひそめた。当時彼女はニロに確認したが、確かにニロのデザイン画で間違いなかった。

でも永川安瑠がどうしてこんなことを言うのだろう？

前の二回の出来事があったので、ユリはもう安瑠を軽視することはできなくなっていた。心の中でこのデザイン画の作者についても少し疑問を抱き始めていた。

「これは私のものです。どうしてニロのものになっているのですか？」安瑠は眉をひそめた。

ニロはユリの視線に少し不安を感じたが、それでも強気に出て、大声で言った。「これは明らかに私のデザインよ、あなたは何の権利があってこれが自分のものだと言うの？」

彼女の声に展示ホールの人々が集まってきて、異様な目で傍らの安瑠を見ていた。

葉山逸風は眉をひそめ、ショーケースの中のデザイン画を見た。その下には明らかにニロの名前があった。そこで彼は安瑠に向かって尋ねた。「これがあなたのものだという証拠はありますか？」

安瑠は唇を少し噛み、目は澄んでいて確固としていた。背筋をまっすぐに伸ばし、体格は小柄だが、人を見くびらせない雰囲気を漂わせていた。

「このデザインのコンセプトと設計意図を説明できます」