時々葉山千恵は本当に不思議に思っていた。永川安瑠の胃は実際にブラックホールと繋がっているのではないかと。そうでなければ、どうしてこんなに食べられるのに全然太らないのだろう?
やはり、生まれながらにして人を落ち込ませるために生まれてくる人もいるのだろうか?
でも彼女は知らなかった。安瑠が痩せているのは、すべてアメリカにいた時にそうなったのだということを。
「ちょっと待って、安瑠、安瑠、あっちを見て」千恵の視線がいくつかの店を滑り過ぎ、最後にある場所で止まった。そして安瑠の腕を引いて前を向かせた。「私の見間違いかな?あの人、あなたの十二おじさんにそっくりじゃない?」
武内衍?
安瑠の目は瞬時に大きく見開かれ、千恵の手が指す方向を見ると、確かに清潔で整った焼肉店の中に、一人の男性が優雅に静かに座っていた。彼から漂う気品と上品さが、その普通の店さえも高貴に見せていた。
彼は青い高級ウールのセーターに黒いカジュアルパンツを身につけ、その姿勢はくつろぎながらも自然で、視線を動かさずに手に持った携帯電話を見つめていた。まるで周りの人々が存在しないかのように、彼の周りには静かな輝きが漂っていた。店内の柔らかな灯りが彼に降り注ぎ、まるで一枚の絵画のように美しかった。
ある人は、言葉を発せず、わざとらしさもなく、ただその存在だけですべての視線を魅了することができる。武内衍のように。
焼肉店の周りには若い女の子たちが集まり、衍を見て話しかけようとしていたが、彼の冷たさに恐れをなして、ただそこに立ってひそひそと何かを話し合っていた。
焼肉店の商売は驚くほど繁盛していて、ほとんどが女性客だった。店主は嬉しさのあまり口が閉じられないほどだった。
安瑠の瞳に驚きの色が浮かび、遠くにいる玉のように気品があり、しかし冷たく無関心な男性を見つめ、少し見とれてしまった。
どんなに普通の焼肉店に座っていても、彼はまるで高級レストランで食事をしているかのように優雅で、その全身から漂う気品は本当に羨ましいものだった。
そのとき、安瑠は女の子たちのグループから、甘い顔立ちの一人の女の子が押し出され、衍に話しかけるように促されるのを見た。その女の子は少しも怖がる様子もなく、大胆に衍の前まで歩いていった。