第126章 永川安瑠の異変

制限時間は1時間で、テーマや内容に制限はなく、何を描いても、どんなデザインを考えても構いません。これは彼女たちのデザインスタイルを見るためだけのものですから。

ニロと永川安瑠は向かい合って座り、互いのデザインが見えないよう十分な距離を置いていました。

時間が始まるとすぐに、ニロはペンを取って描き始めましたが、安瑠はずっと動かず、ただ静かに席に座り、目の前の白い紙を虚ろな目で見つめていました。

彼女の手首は、テーブルの下で微かに震えていました。

安瑠の最も鮮明な記憶は、かつての7日間、食事も水も与えられず、昼夜問わずデザイン案の作成を強いられたことでした。もし彼女が抵抗すれば、あの暗い部屋に閉じ込められ、誰一人いない場所へ…

しかし後になって彼女は知ったのです。あの人たちは実は暗闇の中から彼女の惨めな姿を笑っていたのだと。

丸7日間、光のない日々を過ごし、水も食べ物もなく、もう耐えられなくなった時だけ、誰かが何か食べるものを持ってきてくれる。そんな絶望と無力感が、安瑠の心を極限まで痛めつけていました。

麻痺。

嫌悪。

彼女はペンを持てない、持つことができないのです。

特にこんなに多くの人がいる状況では、彼女には絶対に持てませんでした。

たくさんの人、多くの人が彼女を見ている…

安瑠の神経はほぼ崩壊寸前でした。彼女は必死にあの日ペンを持った感覚を思い出そうとしていました。紙の上を舞うような感覚、インスピレーションを解き放つ感覚を。

しかし、かつての悪夢は彼女のすべての努力を簡単に打ち砕いてしまうのでした。

彼女にはできない…

展示ホールの外の廊下に、すらりとした背の高い人影がかなり長い間立ち尽くしていました。

安瑠が説明を始めた時から、すでにそこに立っていたのです。

「武内社長、来られないとおっしゃっていたのに、どうして急に来られたのですか?」橋本南は書類を手に持ち、ようやく武内衍を見つけ、彼の後ろに立って、好奇心を持って前を覗き込みました。

目の前の巨大なガラス窓を通して、展示ホール全体を一望することができました。

最も目を引いたのは、展示ホール内の長テーブルに座っている一人の少女でした。彼女は呆然と木のように座り、小さな顔は青白く透き通り、まるで触れればすぐに壊れてしまいそうでした。