第179章 墨川石師匠ジュエリー展

永川安暁の強い主張に押され、安瑠は不本意ながらも完全武装して外出することになった。

彼が階下に降りたとき、葉山千恵はまだ遠くに行っておらず、道路の角に立ってタクシーを待っていた。

安暁はやや苛立ちながら髪をかき混ぜ、車庫から車を取り出し、千恵の前に停車させると冷たく言った。「乗れ」

千恵は安暁がわざわざ自分を送ってくれるとは思っておらず、目に喜びの光を浮かべながら頷き、反対側に回って助手席に座った。

安暁は彼女をさっと見やり、エンジンをかけてアパートの出口から出た。「住所は？」

千恵は安全ベルトを締め、彼の質問を聞くとすぐに答えた。「xx別荘区28棟です」この言葉の後、安暁はもう口を開かず、車内の雰囲気は沈黙と緊張に包まれた。この気まずさを打ち破るため、千恵は続けて言った。「送ってくれてありがとう」

車がちょうどカーブに差し掛かったところで、安暁は手慣れた様子でハンドルを切った。スピードは速いが非常に安定していた。彼は千恵を見ることもなく言った。「姉さんに感謝すればいい」

彼女を送るのは自分の意思ではなかった。彼女と一緒にいると、ただ煩わしさを感じるだけだった。

千恵は恐らく安瑠が安暁を説得して自分を送らせたのだろうと理解していた。この世界で安暁を動かせるのは安瑠だけだった。そのことを知っているからこそ、失望も大きかった。

「安暁、あの時の私はきっと分別がなくて、あんなことをしてしまったの。今は本当に間違いに気づいたわ。どうして一度だけでも許してくれないの？」千恵は珍しく懇願するような口調で話し、横を向いて彼のハンサムな横顔を見つめた。

かつては安瑠の後をついて回り、甘い声で安瑠を「お姉さん、お姉さん」と呼んでいた少年が、今では彼女も見上げるような人物になっていた。

安暁は一言も発せず、車のスピードを上げた。本来なら30分かかる道のりを15分に短縮し、28棟の別荘の前に車を停め、ロックを解除した。「降りろ」

千恵は唇を噛みながらしばらく彼を見つめたが、彼が全く動じないのを見て、仕方なく車のドアを開けて降りた。

彼女が車から降りるとすぐに、安暁の車は彼女の背後をかすめるように猛スピードでその場を離れていった。少しの躊躇もなく、彼女が家に入るのを待つこともなかった。