第248章 おじさん、かっこいい！

「離せ！離せ！この小娘が！」男は力強く望未を押し、彼女を横に押しやった。

望未は希未のように手先が器用ではなく、少しぽっちゃりした小さな体が後ろに下がり続け、もう少し下がると扉の端まで行ってしまう。そこには階段があり、ここから落ちたら必ず怪我をするだろう。

希未はそれを見て、すぐに壁に手をついて体を起こし、望未に向かって走り出した。

しかし望未は転ばなかった。何か硬いものに寄りかかっていた。

望未は無意識に振り返ってみると、黒い影が見えた。小さな顎を上げて見上げると、彼女は完全に魅了された。

なんてかっこいいおじさん！

彼は黒い高級オーダーメイドスーツを着て、堂々とした体格と長い脚、周囲に漂う冷たく淡々とした雰囲気が、まるで禁欲系の男神のように冷たく優雅だった。

刀で彫ったような顔立ち、冷たい目元、高い鼻筋、そして薄くセクシーな唇は、微笑んでいるようでいないように結ばれ、無形の圧迫感を与えていた。

「おじさん、すごくかっこいい！」望未はすぐに先ほどいじめられた悔しさを忘れ、このかっこいいおじさんの足に飛びついて抱きしめ、すりすりしながら柔らかい声で言った。

男性は少し頭を下げると、ピンク色の小さな団子が自分の足にしがみついてすりすりしているのが見えた。眉間にしわを寄せ、彼女を押しのけようとしたが、なぜか、いつも冷淡で感情のない彼の目がこのピンク色の団子の柔らかくて可愛い顔に触れた瞬間、心の底で何かが動いた。ある弦が誰かの手で軽く触れられたように、かすかに揺れた。

これはどんな感覚だろう？

不思議な感情が彼の心を満たし、普段子供が嫌いな彼が彼女を押しのけることができなかった。

希未は望未がこの男性の足を抱きしめているのを見て、口角を引きつらせながら歩み寄り、望未の小さな手を取った。「望未、早く離して。」

男性の視線が希未に落ち、ちょうどそのとき希未も彼を見上げた。目と目が合い、不思議な気流が彼らを包み込むように、奇妙で不思議な感覚だった。

「あなたは…」希未は男性の見覚えのある顔を見て、どこかで見たことがあるような気がした。

そのとき、ある男性が先ほどの宝石を奪って隙を見て逃げた男を連れてきて、男性の側に来ると、敬意を込めて尋ねた。「社長、犯人を捕まえました。どのように処置しましょうか？」