第265章 私が行けるかどうか言ってみろ?

永川若が永川安瑠に押し付けたお菓子が失敗作だということは、もちろん彼女自身が知っていた。数を揃えるために無理やり入れただけで、どうせ武内衍はこういうものをあまり好まないから、気づかれることはないだろうと思っていた。

まさか途中で永川安瑠が現れるとは……

永川若は表情を硬くして、衍の前に置かれたお菓子を見つめた。まるで自分で自分の首を絞めるような気分だった。「衍、こっちのお菓子の方が美味しそうだから、こっちを食べない?」

自分の作ったものが下手だと認めて、そのお菓子を取り戻すなんてできるはずがなかった。幸い衍はこういうものを食べないから、少し押し付ければこの件は過ぎ去るだろう。

衍は彼女が勧めたお菓子には手を伸ばさず、代わりに安瑠と交換したお菓子を取り上げ、優雅な動作でフォークで刺して口に入れ、ゆっくりと噛み締めた。

味は良くなく、安瑠のものの半分も美味しくない。

衍は心の中でそう思いながら、彼の分のお菓子を嬉しそうに食べている安瑠の様子を見て、目元に温かみのある表情を浮かべた。

焦げたお菓子を衍が食べるのを見て、若はまず驚き、そして心に湧き上がる喜びで、彼女が常に保っていた優しい表情にひびが入った。

衍はお菓子が好きではないのに、彼女の手作りのお菓子を食べたということは、彼の心の中に彼女への何かしらの気持ちがあるのではないだろうか?

もし安瑠が若の考えを知ったら、きっと「お嬢さん、あなたの想像力は豊かですね」と感心することだろう。

安瑠はお菓子を食べ終え、牛乳のカップを取って一口飲んだ。味が甘すぎて、クリームもあまり均一に混ざっておらず、食感も普通だった。

「どう?」衍は安瑠が口をすぼめる仕草を見て、彼女の唇の端についたクリームをティッシュで拭き取った。その親密な動作に安瑠は一瞬驚いた。

「まあまあかな」安瑠は正直に答えた。口の中にはまだ甘ったるい味が残っていた。

若は衍が安瑠の口元を拭く様子を見て、目に嫉妬の炎が燃え上がりそうになった。安瑠を見る目は軽蔑と嫌悪に満ちていたが、衍に向かっては優しく微笑んで「衍は?美味しかった?」と尋ねた。

衍、衍って、随分と親しげな呼び方だこと。

安瑠は皿の上の小さなスペアリブを食べながら、口の中の甘さを消そうとした。

「まあまあだ」衍はさらりと言い、手元の赤ワインのグラスを取って軽く一口飲んだ。