第37章 どうやら……やりすぎたようだ

昨夜はとても不愉快だった。

だが後から考えてみると、藤原宴司の体に異変を感じたことも確かだった。

男というのは本当に下半身で考える生き物だ。

誘惑に耐えられない。

そしていつでもどこでも発情する。

例えば今、彼らはまだオフィスにいる。

深谷千早が宴司を押しのけようとした瞬間……

「藤原社長、お車が下に到着しました……あっ、すみません、何も見ていません!」

オフィスに突然、明石和祺の慌てた声が響いた。

彼もまさか、オフィスでこんな描写できないような場面に出くわすとは思っていなかっただろう。

明祺は彼女と宴司の関係が良くないことを知っていたはずだ。なのに今、宴司が彼女をソファに押し付けてキスしているところを……

明祺はきっとトラウマになっただろう!

明祺の突然の登場で。

宴司はハッと我に返ったように、急いで千早の体から離れた。

目の奥に明らかな動揺が走る。

まるで自分がなぜさっきあんなことをしたのか分からないといった様子で。

その姿はどこか、少年のような初々しさがあった。

よく見ると、彼の顔が赤くなっているようだ。

彼女の見間違いだろうか?

宴司がどうして純粋で恥ずかしがり屋のような印象を与えるのだろう?!

まさに青天の霹靂だ。

だが彼女が宴司の表情をはっきり見ようとした時には、彼はすでに背を向け、極めて冷たい声で明祺に尋ねていた。「車が来たのか?!」

「はい」明祺は急いで答え、生存本能全開で言った。「まだ来ていないことにもできます。社長はこのまま続けても……」

宴司はすでに立ち上がり、大股で出て行った。

明祺は自分の上司の怒りに満ちた背中を見て、死にたい気分になった。

彼は本当に社長と社長夫人がオフィスで情熱的になるとは思っていなかった……

社長はいつもワーカホリックで、そういうことにあまり興味がないんじゃなかったのか?!

これじゃあ焦りまくっているじゃないか。

千早もソファから立ち上がり、服を整えてオフィスを出た。

明祺は彼らの後ろについていく。

終始口を開く勇気がなかった。

車に乗る時も、明祺は一緒に乗る勇気がなかった。

社長の殺人的な視線で死にたくなかったからだ。

そのため、マイバッハには無言の宴司と千早、そして息をするのも恐る恐るの運転手だけが乗っていた。

千早は実際かなり冷静だった。