第63章 腰の怪我が治ったら誘惑しに来て

藤原宴司の声は低く、かすれていて、欲情を含み、明らかに挑発的な調子を帯びていた。

深谷千早は胸がわずかに震えた。

普通の人間ならこんな誘惑を拒めるはずがない。

千早は恥ずかしさと怒りが入り混じった気持ちになった。

このクソ男は美しい外見以外に何があるというの?!

うーん。

そうだ、お金がある。

たくさんのお金が。

「もし奥様が強く望まれるなら、夫としての義務を果たすことも不可能ではありませんが」宴司は姿勢を正した。

彼はすでに千早の傷に薬を塗り終えていた。

彼は白いシャツを着ていた。

おそらくまだ入浴していないのだろう。

シャツのボタンは三つ目まで留められていた。

彼の胸元がかすかに見え隠れしていた。

宴司は骨ばった指を留められたボタンに置き、優雅に、ゆっくりと残りのボタンを外し始めた。

千早は少し緊張して宴司を見つめた。

彼の口元の笑みには、明らかに危険な色が混じっていた。

千早は突然、足を宴司の顔に向かって蹴り出した。

こんなにイケメンに生まれやがって!

私を誘惑しようとしやがって。

足が彼の顔に触れる寸前、足首が宴司にがっちりと掴まれた。

千早はもがいたが、まったく動けなかった。

「藤原宴司、離して……んっ!」

千早の胸が震えた。

心臓が激しく鼓動し、まるで一拍抜けたかのようだった。

彼女は足の裏に突然の柔らかさを感じ、温かく湿った息が当たるのを明確に感じた。

くすぐったくて、そして少し…官能的だった。

宴司のバカ、彼女の足の裏にキスをしているのだ。

汚いとも思わないのか?!

そして彼女は長い間、抵抗することすら忘れていた。

彼女はただじっと宴司を見つめ、彼のいつもとは違う行動を見ていた。

空気中には、言葉では表現できない何かが漂っていた。

気温が本当に上昇しているようだった。

千早は顔がどんどん熱くなるのを感じた……

心拍数も一緒に上がり、制御不能になっていた。

千早は唇を噛んだ。

まるで自制しようとしているかのように。

全身がなぜか落ち着かなかった。

藤原宴司は一体何がしたいの?!

やるならさっさとやればいいのに。

どうせ、彼女は損をしないのだから。

こんな男、これから一回寝るごとに一回減るだけだ。

彼女は突然理解した。

しかし今、宴司はまったく動く気配がなかった。