第58章 遭遇

白井香織は軽く微笑んだ。

彼女は明石和祺が今日何の目的で来たのかよく分かっていた。

彼女は答えた。「壊してしまうのが怖くて、つけていませんでした。でも持ってきています。忙しさが一段落したら宴司さんに返そうと思っていたんです。宴司さんがそんなに忙しいなら、お邪魔するのはやめておきます。明石補佐から宴司さんに返していただけますか…」

そう言いながら、彼女は自分のハンドバッグの中からネックレスを探し始めた。

「お安いご用です。白井さんはお気遣いなく」と和祺は言った。

そして静かに待った。

しばらくして。

香織の表情がだんだんと慌ただしくなってきた。

和祺も彼女の様子の変化に気づき、「どうしました？」と尋ねた。

「ネックレスが、見当たらないみたいです」香織は和祺を見た。

その瞬間、彼女は顔が青ざめるほど驚いていた。

和祺の顔にも緊張が走った。

彼は尋ねた。「白井さんは確かにハンドバッグに入れて持ち出したのですか？もしかしてご自宅に置いてきたのでは？」

「確かですよ。今日必ず宴司さんに返そうと思っていたんです。このネックレスが宴司さんにとってどんな意味があるのか分かりませんが、彼がとても急いで欲しがっているように感じたので、昨日仕事が終わって帰った後、まず最初にネックレスを外して箱に入れ、バッグに入れたんです。今日出かける時も、わざわざバッグを確認して、中に入っているのを確認したんですよ…」

香織は話しながら、目に涙を浮かべていた。

「バッグを開けて何か取り出すときに、どこかに落としてしまったのではないですか？」と和祺は尋ねた。

「分かりません。その後出かけたとき、メイクに急いでいたので、バッグにネックレスが入っていることを忘れてしまって、今日一日、たった今バッグを開けたら、なくなっていたことに気づいたんです」香織は苦しそうに言った。「どうしましょう？もし見つからなかったら、結果はとても深刻なことになりますか？このネックレスは宴司さんにとってとても大切なものなんですか？」

「はい、とても重要です」和祺はひとつひとつ言葉を区切って言った。

なぜなら、それは社長夫人が気に入っているものだから。

「じゃあどうしましょう？」香織は泣きそうになった。

和祺は冷静さを保とうとした。

今慌てても仕方がない。