春野鈴音は深呼吸した。
彼女はトイレのドアを開けて出た。
目の前に中年男性が立っていた。
彼は意図的に彼女を待っていたようだった。
鈴音は軽く微笑んだ。「山本さん」
何杯か飲んだ後、彼女はほぼ全員の顔と名前を覚えていた。
「酔ったか?」山本銘が彼女に尋ねた。
「大丈夫です」
「春野さんの酒量は本当に驚くべきですね」銘はどこか淫らな笑みを浮かべながら、手を伸ばして鈴音の顔に触れようとした。
鈴音はそれを避けた。
銘の目が一瞬鋭くなった。
「木村監督が外で待っていて、トイレであまり長居しないようにと言われたので」鈴音は適当な言い訳をした。
「鈴音よ、鈴音」銘は彼女の名前を呼び、意味深な笑みを浮かべた。「あなたはもう業界の新人じゃないのに、まだわからないのかい?木村冬真が今夜あなたを連れてきたのは、私たちを喜ばせるためだよ」
鈴音はもちろん知っていた。
でも、彼女はそうしたくなかった。
「安心して、冬真は私が入ってきたことを知っている。あなたが長居しても彼は気にしないよ」そう言いながら。
銘は突然鈴音を抱きしめ、彼女をトイレの中に押し込んだ。
「山本さん、ちょっと待って...」鈴音は拒否しようとした。
「ちゃんと報いるよ」銘は少し焦っていた。
「そうじゃなくて、この場所は...別の場所にしませんか?ここは少し汚いし、あまり便利じゃないし...」
「すぐに終わるから」銘は鈴音の服を引っ張った。
鈴音は彼を押し返そうとしていた。
彼女はこの状況でどう拒否すべきか分からなかった。
拒否したら本当に冬真を怒らせてしまうのだろうか。
でも。
彼女は本当にしたくなかった。
楽花に約束したのだ、枕営業はしないと...
鈴音は歯を食いしばった。
全力で押し返そうとした瞬間。
トイレのドアが突然開いた。
木村冬真が入り口に立っていた。
この時、鈴音はまだ銘に壁に押し付けられ、服装は乱れていた。
物音に気づき、銘と鈴音は振り向いた。
銘は少し気まずそうだった。
このような場面を見られるのは、多少なりとも恥ずかしいものだ。
彼は言った。「彼女があまりにも積極的で、つい自制できなくなってしまった」
鈴音は銘を見つめ、彼がそんなことを言うとは思わなかった。
「そうか?」冬真は笑った。