第112章 深谷千早の微かな感動(二更)

夜の闇の中。

藤原宴司の心臓の鼓動が徐々に速くなっていった。

彼は深谷千早をしっかりと抱きしめ、彼女に周囲の危険を気づかせないようにした。

彼女に気づかせなかった。彼らの周りに、一匹の蛇が、じっと彼らを見つめていることを。

彼もまた、突然周囲の気配に気づいたのだ。

あまりにも暗く、何も見えない。

しかし、かすかに影を通して、何かが周りで蠢いているのが見えた。

間違いない、蛇だ。

宴司は眉をきつく寄せた。

千早を抱く力が、無意識のうちに強くなっていた。

千早は宴司に抱かれて息もできないほどだった。

こいつ、そんなに寒がりなの?!

彼は寒がりには見えないのに。

やっぱり、見た目倒れだな。

千早も抵抗せず、宴司の腕の中で横になり、不思議と温かさを感じていた。

そして不思議と安心感も。

宴司の体が今、緊張していることにまったく気づいていなかった。

彼の額には冷や汗が浮かんでいた。

目の前にいる蛇と睨み合い、互いに警戒していた。

夜の静けさが恐ろしいほどだった。

千早は宴司の腕の中で、冷静に救助を待っていた。

もうすぐだろう。

この山はそれほど大きくない。

救助隊はすぐに到着するはずだ。

ただ暗いせいで、救助が難しくなっているだけだ。

千早はそう自分を慰めていた。

突然。

宴司の体が動いた。

千早が反応する前に、彼女の体は彼によって強く投げ出された。

「あっ!」

千早は驚いて叫んだ。

こいつ、何てんかんでも起こしたの?

振り返った彼女は怒りに燃えて、「宴司、あなた狂ったの…」

その瞬間、暗闇の中で宴司の黒い影が何かと格闘し、そして近くの石を掴んで、狂ったように地面に叩きつけるのが見えた。

千早は恐怖で震えた。

何が起きているのか全くわからなかった。

しかし彼女は宴司の狂ったような息遣いを聞いた。

力を使い果たしただけでなく、恐怖も含まれているようだった。

「宴司、どうしたの?」千早はすぐに尋ねた。

宴司は何も言わなかった。

「一体何があったの?」千早は近づいていった。

彼女は宴司の腕をつかみ、彼の過激な行動を止めようとした。

宴司は黙っていた。

自分を落ち着かせようと努力しているようだった。

さっき蛇が飛びかかってきた瞬間、彼も感じていた、心の中の極度の恐怖を。