第120章 皆が被害者（一更）

「そうは思わない」藤原宴司は答えた。

深谷千早は宴司を見つめた。

「君が馬鹿だとは思わない」宴司は補足し、断言した。

千早は少し驚いた。

宴司のような自惚れ屋なら、彼女の行動を一蹴するはずだった。

彼という人間は、明らかに愚かさを嫌う症候群を持っている。

「わかっている。君はまだ深谷家に期待を持っているんだろう」宴司は核心を突いた。

千早は唇を引き締めた。

反論しないということは、認めたも同然だった。

自分がこんなにも愚かだと思った。

深谷家がどんな人間か、幼い頃からよく知っているはずなのに！

それでも、血のつながりに対するわずかな期待を持ち続けていた。

「誰でもそうなるものだ、君だけじゃない。血は水よりも濃い、簡単に切れるものじゃない。私でも、そこまで冷血にはなれないだろう。ましてや、母親の死と深谷家が無関係かもしれないと突然気づいたなら、深谷家への偏見や恨みは自然と薄れるものだ。人情というものだ」宴司は理解を示すように言った。

千早はうなずいた。

認めざるを得ない、宴司の言葉はすべて的を射ていた。

そう、彼女は深谷家が嫌いだった。

しかし血は水よりも濃く、どうしてもわずかな感情は残っていた。

重要なのは、宴司と詳しく分析した結果、深谷家が母親に毒手を下した可能性は低いと思えるようになったことで、少なくとも深谷家は彼女の底線を踏み越えていないと感じるようになった。

心を開くことはなくても、表面上は深谷家に面子を与え、お互いに平和に過ごせると思っていた。

しかし今は。

彼女の期待が大きすぎたのだ。

深谷家は彼女を本当の家族と見なしたことなど一度もなかった。

彼らにとって、彼女は利益を得るための道具に過ぎなかった。

そして一度でも彼女が卓也と対立すれば、深谷家は善悪を問わず卓也の側に立つのだ。

「だから」宴司は千早の考えを見透かしたように、厳しい口調で言った。「今こそ、完全に手放す時だ。深谷家は君の未練に値しない。彼らに対して心を柔らかくしてはいけない。彼らは感謝することなく、ただ図に乗るだけだ」

千早は唇をきつく結んだ。

彼女は本当はずっと知っていたのだ。

ただ何度も何度も失望を繰り返していただけだった。

「うん、もうしないわ」千早は約束した。

もう二度と、愚かな真似はしない。

宴司の口元が上がった。