第132章 罠(一更)_2

「私は自分の物を他人に乱されるのが嫌いだ。引っ越してきたら、あなたの荷物はあの部屋に置いておくように」木村冬真は主寝室の向かいの寝室を指さした。

「はい」

春野鈴音は急いで返事をした。

しばらく冬真から言葉がなかったので、彼女はようやく部屋を出た。

鈴音が去った後、冬真は突然ほっとため息をついた。

鈴音の前では、一体誰がより緊張すべきなんだ?!

……

週末を過ごした後。

月曜日。

深谷千早は藤原蘭ジュエリーに出勤した。

エレベーターに入ったところで、ドアが閉まる瞬間。

「すみません、ちょっと待ってください」甘ったるい女性の声が突然響いた。

千早は目の前の人物を見て、明らかに驚いた。

深谷夕遅がここで何をしているの?!

夕遅は千早を見た瞬間、むしろ平然としていた。

彼女はエレベーターに乗り込むとすぐに隣の人に尋ねた。「すみません、人事部は何階ですか?今日初出勤なんです」

「8階です」隣の男性社員が答えた。

「ありがとうございます、優しいですね」夕遅は男性社員に向かって愛らしく微笑んだ。

男性社員はこのような褒め言葉に少し照れた様子で。

彼は笑いながら答えた。「同僚ですから、どういたしまして」

夕遅は再び彼に甘く微笑みかけた。

千早はようやく小林温子がなぜ夕遅をこんなに嫌っているのか理解できた。

エレベーターが到着した。

千早は自分のオフィスに入った。

椅子に座ったばかりのところで、夕遅からのLINEメッセージを受け取った。「お姉さん、さっきエレベーターで挨拶できなくてごめんなさい。コネを使っていると思われたくなかったの。気にしないでね」

千早は見なかったふりをした。

夕遅は勝手にメッセージを送り続けた。「今日から藤原蘭ジュエリーで働くことになったの、デザイン部よ。義兄さんが手配してくれたの。義兄さんはお姉さんに話したよね?機会があったら個人的に義兄さんにお礼を言いたいんだけど、彼のオフィスは何階か知ってる?」

千早は依然として無視した。

彼女は夕遅が藤原宴司のオフィスの階を聞きたいわけではなく、ただ自慢しに来ただけだということをよく分かっていた。

本当に笑えることだった。

あの夜、彼が彼女を好きだと言ったこと。

これが所謂「好き」というものなの?!