第49章 心が冷めて_2

「誤解だ」藤原宴司は一瞬の間を置いて答えた。

「はい、すみません、私知らなくて……」白井香織はさらに頭を下げた。「私、本当にバカみたいで……」

そう言いながら、大粒の涙がポロポロと落ちていった。

見るからに可哀想な様子だった。

宴司の目に一瞬イライラの色が浮かんだ。

香織の涙には、正直もう少し麻痺していた。

しかし、この瞬間は香織に対して一つの逃げ道を与えた。「このネックレスは藤原蘭ジュエリーのデザインではないから、君の広告塔としては適していない」

「じゃあ外します……」

ちょうどその時、香織の電話が鳴った。

佐々木美珠の大きな声が車内に響き渡った。「香織、どこまで来た?撮影が始まるわよ、遅れないでね!」

「もうすぐ着くわ、あと……」香織は窓の外を見た。

運転手はすぐに答えた。「10分ほどです」

「運転手さんが10分くらいって」香織は繰り返した。

「急いでね。そうそう、今日の撮影には人気女優の夏目双葉も来るから、あなたの服装は大丈夫?身につけるものはちゃんと揃えた?負けないようにしないとダメよ、わかる?」マネージャーは念を押した。

「うん」香織は答えて電話を切った。

彼女は恐る恐る宴司を見つめた。「宴司、もう一日だけ付けていてもいい?」

宴司の目が微かに動いた。

「海外との契約解除で結構な違約金を払ったから、今手元が少し厳しくて、見せられるようなジュエリーがないの」香織は言った。「マネージャーが他のタレントに見劣りしないように、少し見栄を張りなさいって……もし難しいなら構わないわ……」

そう言いながら香織はネックレスを外そうとした。

「明日、明石に取りに行かせる」宴司が突然口を開いた。

前の席にいた明石はもう焦りで死にそうだった。

なぜ許可してしまったのか?

今ダイヤモンドを取り戻して社長夫人に返せば、説明すれば許してもらえるかもしれないのに。

今、社長が香織に他の撮影に持っていくことを許すなんて……

彼は本当に心配だった。後で社長夫人に渡しても、夫人はきっと喜ばないだろう。

女性は誰も他人が使ったものを好まない。

社長はなんてバカなんだ!

「ありがとう、宴司」香織は涙を拭いて笑顔になった。

宴司は視線を窓の外に向けた。