第176章 ホームズ.深谷(一更)

深谷千早は藤原宴司が出かけた後、部屋に戻って仮眠をとった。

昨夜は本当に疲れた。

今でも全身がだるく感じる。

うとうとしていると、突然電話が鳴った。

千早は着信を確認し、小林温子というやつにはほとほと呆れた。

少しはゆっくり休ませてくれないものか。

「もしもし」千早の声には眠気が混じっていた。

「まだ寝てるの?」温子の声は明らかに高揚していた。

「寝ることも罪なの?」

「よく今眠れるわね」

「どうしたの?」千早は考えた、きっとまた大事件が起きたのだろう。

予想通り、それは彼女に関係することだった。

「私、藤原宴司と白井香織のあの小娘に本当に腹が立つ!」温子は怒りで声を震わせながら言った。「今日の午後、全国民の前であなたたちの関係を公表したばかりなのに、まだ日も暮れないうちに、二人が密会してるニュースが流れたのよ。もう本当に、宴司のあの犬野郎をどう言えばいいのか分からないわ。離婚しなさいよ、あなたは一人の方が輝けるわ」

千早は無理して起き上がった。

温子には返事をせず、ニュースを見てみることにした。

アプリを開くと、目に飛び込んできたのは目立つトップニュース——「とんでもない嘘!藤原宴司と白井香織の不適切な関係が確定的!」

ニュースを開くと、宴司が香織の家を訪れ、何時から何時まで滞在したか、そして二人の親密な写真が撮られ、不適切な関係が確定したという内容が簡潔に書かれていた。

千早はニュースの写真を見た。

一枚目は宴司と香織がソファに座っている写真で、盗撮のため距離が遠く、二人の表情ははっきり見えなかった。

二枚目は香織が後ろから宴司を抱きしめている写真で、二人ともカメラに背を向けているため、表情は見えなかった。

三枚目は香織が服を脱ぎ、宴司の前に立っている写真だった。

この画像は少しぼやけていた。

香織の背中と、少し動いている宴司の姿だけが写っていた。

「千早」温子が電話の向こうで呼んだ。

「うん」

「ニュース見た?」

「見たよ」

「悲しくない?」

「悲しくないよ」千早は率直に言った。

「本当に悲しくないの?でも宴司はたった今、全国民の前であなたが彼の妻だって言ったばかりで、盛大な結婚式をあげるって言ったのよ。なのに、すぐに香織なんかと仲良くしてるなんて、悔しくないの?」温子は死ぬほど辛かった。