第041章 佐藤さんの心はとても優しい

持田教授は多くの人を見てきたが、厚かましい人は見たことがあっても、榎本剛ほど厚かましい男は見たことがなかった。

予約したからといって、必ず診てもらえるというのか?

彼女は彼に何かを売ったわけでもないし、それに彼女は榎本という姓の予約電話を受けた覚えは全くなかった。この男は明らかに嘘をついていた。

「このお客様、私はあなたからの予約電話を受けた覚えがありません。もしお信じいただけないなら、こうしましょう。病院の固定電話には通話記録が残っています。あなたの電話番号を教えていただければ、確認することができます。もし本当に電話をくださっていて、私が約束したのに果たせなかったのであれば、それは確かに私の落ち度です。心からお詫び申し上げます。しかし、もし電話をしていないのに、ここで無理に割り込もうとしているのであれば、それは…」

剛がまさか持田教授が電話番号の確認を求めてくるとは思いもよらなかった。

彼は泉里香を喜ばせるために持田教授と予約したと言ったのだが、彼の考えでは持田教授のところには必ず多くの人がいるはずで、そうなれば里香は待ち切れずに帰ってしまうだろうと思っていた。

そうすれば里香が自分で待ちきれなかったということになり、彼の無能さのせいではなくなる。しかし、この思惑は持田教授によって暴かれてしまった。

しかも今田由紀とそのパートナーの前でだ。

剛は冷静を装い、眉をひそめながら隣の里香に言った。「里香、やはり別の場所で検査してもらおうか。持田教授は忙しくて物忘れが激しいようだ。これ以上迷惑をかけるのはやめよう!」

里香は幼い頃から甘やかされて育ったため、今、持田教授にこのように厳しく叱られ、面目を失った。

彼女はもちろん同意しなかった。剛の腕を引っ張りながら、持田教授に不快な口調で言った。「いいわよ、調べるって言うなら調べてみなさいよ。私はあなたが怖くないわ。あなたが約束を守らないだけよ。浩樹、私はどこにも行かないわ。彼女に診てもらうつもりよ!電話記録を出させて、彼女に納得させてやるわ!」

陸はサングラスの奥の瞳で剛をずっと見つめていた。彼の言葉が曖昧なのを見て、この人物が嘘をついていることを確信した。

持田教授が里香に道理を説き、電話番号を確認しに行こうとしていた。