そのとき、正面玄関から数人が出てきた。その中の一人、黒い服を着た男性が、彼らのリーダーのようだった。
彼は眉をひそめ、不機嫌そうに入口に立つ五、六人の清純な装いをした女の子たちを指さして、側にいる人間に怒鳴った。「こんな程度の女を幻夢に連れてくるとは!今夜は大物ばかりが来ているんだぞ。こんな女で誤魔化して、オーナーの顔に泥を塗るつもりか?オーナーがお前たちを全員サメの餌にするぞ。さっさと芸術学校の女子学生を何人か連れてこい。こいつらは演技すらまともにできていない!」
「榎本兄さん、今どき芸術学校の女子学生なんて、みんな一度は水商売やってますよ。偽善者ばかりで、本当に清純な子なんて見つけにくいんです!」
一人の男が頭を下げながら言った。
「見つけにくい?!見つけにくくても探さなきゃならないだろう。今日中にいる大物はそういうタイプが好きなんだ。見つけられなくて今日の仕事を台無しにしたら、お前をどうするか分かってるな!」
「はい、榎本兄さん、あなたは…」
芸術学校の女子学生?!
今田由紀は彼らからやや離れた場所にいて、かろうじてこれらの言葉を聞き取った。彼女は幻夢に入りたくて仕方がなく、何も考えずに彼らの方へ走っていった。
「あの、こんにちは、女子大生を探しているんですか?!」
由紀は甘く清純な笑顔を見せた。彼女はもともと世間知らずで純粋だった。風俗店の女性たちを見慣れていたリーダーは、彼女を見た瞬間、彼女から放たれる清らかな雰囲気に心を奪われた!
彼は目を輝かせ、彼女を指さして言った。「あなたは?」
「はい、私は南大の学生ですけど、私でいいですか?!」
「いいとも、いいとも。お嬢さん、あなたのイメージは私の基準にぴったりだ。一言で言えば『純』!あなたに決めた!」リーダーは彼女に頷き、賞賛の眼差しを向けながら、彼女を連れて簡単に幻夢の中へ入っていった。
こんなに簡単に入れるとは思わなかった。由紀は中に入ってからも、現実感がなかった。
中は迷幻的な光が絶えず変化し、騒がしい音と耳をつんざくような音楽、人々の波、男女が退廃的な情熱の夜を楽しんでいた。
由紀は数歩歩いただけで、恐ろしくなって足を止めた。というのも、彼女が入った瞬間から、周囲のあらゆる角から彼女に向けられる視線を感じ、それが彼女を不安にさせたからだ。