第16章 風影の黒幕

春木錦は怒りのあまり笑みを浮かべ、美しい顔に冷気を漂わせていた。

「不正な手段で役を奪い取って、彼女は順調に演じられると思っているの？本当に厚かましいわ。まずはあなたから投資家の集まる場所を聞き出し、それから口実を設けて星野社長を誘惑したのよ。こんな恥知らずの安い女、役者という職業に泥を塗るわ」

可美は顔色を変え、勢いよく立ち上がって錦を見た。

「錦、発言には気をつけて。自分の立場をわきまえなさい……」

「ふん……あなたは彼女をずいぶん熱心にかばうのね？私のマネージャーを2年もやっていながら、葉田初陽の半年にも敵わないの？可美、風影の裏のオーナーは、あなたが手を出せる相手じゃないわ。忠告しておくけど、自分の仕事をきちんとこなして、私の嫌いな人を勝手にかばわないことね」錦は冷笑し、警告の響きを含んだ口調で言った。

可美は一瞬固まり、錦を見つめたが、もはや一言も発することができなかった。

風影会社は設立から3年、直属の上司であるヴィック社長以外に、その裏のオーナーは極めて神秘的で、彼女は一度も会ったことがなかった。

錦の何気ない一言から、彼女はすぐに錦の並外れた身分に鋭く気づいた。

「あなたは風影の裏のオーナーを知っているの？あなたは一体誰なの？」

2年前、ヴィックは錦を連れてきて、全力で錦を売り出すよう彼女に言った。

新しく設立された会社が、わずか2年で涼城のトップ10エンターテイメント事務所に躍り出た。

風影が頼りにしたのは運だけではなく、その背後にいる真の裏のオーナーの権力だった。

「私が誰かなんて、あなたが知る必要はないわ。ただ知っておくといいわ、今日からあなたは私、春木錦のマネージャーではなくなるの。私はヴィックにとっくに要請していたの。彼は大金を使って雲城芸能プロダクションのトップマネージャー月影麗を引き抜いたわ。麗の能力があれば、トップアイドルの座を取れないなんて心配ないわ。あなたが葉田初陽と関わりたいなら、私たちの仕事関係も今日で終わりよ」錦は少し眉を上げ、口元に笑みを浮かべ、瞳に得意げな光を宿した。

可美の顔色が青ざめ、目の前で笑いを抑えきれない女を見つめた。

冷たさが波のように押し寄せてきた。

「錦、私は心血を注いであなたを売り出したのに、こんな形で恩を返すの？」