第20章 背中が痛い

「華麗なる歳月」という映画で、彼は内定の主役だった。

春木錦の少し慎重な態度を見て、初陽は鋭く違和感を察知した。

錦は、石川桐人を少し恐れているようだった。

「あっ...痛い、背中がすごく痛い」初陽は目に光るものを宿し、床に落ちたブランドバッグを見つめ、少し冷たくなって頭を下げ、歯を食いしばって叫んだ。

「初陽、病院に連れて行くわ。何も問題が起きないといいけど」可美はすぐに前に出て、初陽を支え、心配そうに急いで言った。

石川桐人は眉をひそめ、錦をさっと見て、一瞬冷たい視線を送った。

錦は桐人の冷たい視線を感じ、思わず体が震えた。

「葉山さんを病院に連れて行く。ヴィック、ここの事は処理しておいてくれ、可美は協力してくれ」彼は後ろについてきた、非常に恐れているヴィックを見て、淡々と指示した。

事を処理する、この意味は言うまでもない。

今回の衝突について、彼は明確な説明が必要だった。

ヴィックは典型的な東西混血のハンサムな男性で、高価なスーツを着こなし、彼の長身をより一層際立たせ、独特の雰囲気を醸し出していた。

今の彼は、顔色の悪い錦を見て、無言で頷いた。

「わかりました」

初陽の心の中の疑問はさらに深まった。ヴィックまでもが桐人に対して非常に敬意を払っている。これは何を意味するのか。

心臓が跳ね、前世の記憶が突然脳裏に浮かんだ。風影芸能プロダクションは2015年に、その背後にいる大ボスが風影所属のトップスター石川桐人である可能性があると暴露されたことがあった。

しかし、彼の身分は極めて神秘的で、メディアには彼だという証拠はなく、すべては推測に過ぎなかった。

すべてを手配した後、桐人は可美を見た。

「私がやろう」

その後、多くの人々の注目の中、初陽は桐人に支えられながら、一歩一歩風影芸能プロダクションを出た。

運転手はすでに車を用意し、ビルの下で待っていた。

三人は直接、涼城市中心にある最高の病院へと向かった。

受付、診察、医師は背中に青紫色の打撲があるが、薬を塗ってマッサージすれば良いと言った。

桐人は無言で、初陽のために病室を予約した。

初陽はすぐに断った。その時、背中はすでに看護師によって処置されており、大きな怪我ではなかったので、病室を取って入院する必要はなかった。