第64章 初陽、あなたは本当に美しい

視線を少し動かし、遠くに立っている黒川源を横目で見て、挑発するように目を瞬かせた。

彼の軽快な冗談めいた口調に、メディア記者たちは低く笑い声を上げた。

雰囲気は一気に和やかで活気づいた。この映画界のトップスターは常にユーモアがあり面白く、人当たりが良いため、同業の俳優もメディア記者も彼のことをとても好んでいた。

名声が大きくても威張らず、接するととても親しみやすい人柄だった。

実際、名声が高ければ高いほど、スター気取りをしない傾向がある。

誰も一足飛びに成功できるわけではなく、皆が一歩一歩努力を重ねて成功の階段を上ってきたのだから。

多くの経験を積むことで、心の広さや視野も変わってくるものだ。

笑いが収まると、また別の記者が質問した。

「女性主役の小路流年を演じる人は誰か知っていますか？黒川社長と松本監督は口が固くて、少しの情報も漏らしませんね」

「そうですね、一体誰がそんなに神秘的にしているんでしょうか？」

「最も呼び声が高い女性主役候補は東雲敏の他に、もう一人大きな注目を集めている人物がいますね。ドラマ『小さな橋と流れる水』で金映画賞の最優秀女優賞を獲得した青木盈子です。東雲敏が女性主役でないなら、必然的に盈子さんでしょう」

「わぁ、トップスターと新進気鋭の最優秀女優のコンビなら、十分に話題を呼びそうですね…」

記者たちはあれこれと推測し合い、鈴木翊は穏やかに微笑みながら、丁寧に皆に頷いていた。

「メディアの皆さん、女性主役が誰なのか私も非常に興味があります。黒川社長も言っていたように、最後の登場を楽しみにしましょう…」

……

会場前方は人々の声で賑わい、大いに盛り上がっていた。

発表会の舞台裏では、小さからぬ騒動が起きていた。

初陽が楽屋に到着すると、可美は彼女のためにメイクアップアーティストを手配し、スタイリングをしてもらった。彼女に似合う礼服も選んでいた。

スタイリングが完了し、礼服に着替えた彼女は、鏡の中の自分を見て思わず固まった。

「わぁ…初陽、本当に美しいわ、すごく綺麗…」傍らにいた可美は、すでに目を見張っていた。

2年以上の付き合いで、初陽の美しさは知っていたが、正装した初陽を見るのは初めてだった。