第258章 葉山さんが敵に捕まった

初陽は顔色を変え、拳を握りしめ、冷たい眼差しで徐々に彼女に近づいてくる黒服の男たちを睨みつけた。

広田崇は初陽の異変に気づき、驚いて叫び声を上げ、彼女の方へ駆け出そうとしたが、すでに手遅れだった。

人数が多すぎた。彼の周りを取り囲んでいた黒服の男たちが一斉に押し寄せ、彼と揉み合いになった。

初陽は表情を引き締め、手を上げて黒服の男に向かって打ちかかった。

しかし彼女の身のこなしは護身用には十分だったが、相手は身長190センチ前後の筋肉質な男たちで、とても太刀打ちできるものではなかった。

黒服の男は初陽の不注意につけ込み、彼女の背後に回ると、手刀を振り上げて初陽の後頸部に強く打ち下ろした。初陽は小さく悲鳴を上げ、目の前が完全に暗闇に包まれた。

黒服の男は手を伸ばし、すぐに初陽を支えた。

この時、崇はすでに黒服の男たちに5メートルほど押し戻されていた。初陽の状況を目にした時、彼のこめかみが激しく脈打ち、一人の黒服の男を一撃で倒すと、怒りに震えながらこちらへ向かおうとした。

だが残念ながら、相手の数があまりにも多く、彼はこの人の壁を突破することができなかった。

その場で、彼は怒りが収まらず、低く吠えた。「彼女を離せ...」

静寂で冷たい夜の闇の中、彼の声は虚しく消えていき、それらの男たちの動きを少しも遅らせることはできなかった。

男たちは二手に分かれ、一方は初陽を連れて夜の闇に素早く消え、もう一方は崇を取り囲み、彼との戦いを続けた。

崇は怒りで狂いそうになり、目の奥が真っ赤に染まり、歯を食いしばって罵声を浴びせながら、それらの男たちと死に物狂いで戦った。

これほどの騒ぎは、すでに星野寒の注意を引いていた。

彼が初陽が連れ去られ、夜の闇に素早く消えていくのを見た時、怒りの叫び声を上げ、腰のピストルを抜き、バンバンと数発、黒服の男たちの手首と膝を百発百中で撃った。

たちまち、ガシャンという音と共に、数十人の黒服の男たちの手から刃物が落ち、彼らは血を流し続ける手首を押さえ、地面に膝をついて苦しみ呻いた。

寒は薄い唇を噛みしめ、崇の周りに走り寄り、崇を取り囲む黒服の男たちに向かって数発発砲した。同じ結果で、全て手首と膝を撃った。

たちまち黒い影が一面に倒れ、もう立ち上がれなくなった。