可美が初陽を見つけたとき、彼女は病院の近くの道路沿いのベンチに座り、ぼんやりと虚空を見つめていた。
広田崇から電話を受けた瞬間、可美は一晩中不安と心配で落ち着かなかった心が、ゆっくりと落ち着いていった。
彼女は魂が抜けたような、みすぼらしい姿の初陽を見て、彼女の前に駆け寄り、しっかりと抱きしめて、大声で泣き始めた。
初陽に何かあったと知ってから今まで、可美は泣くことができなかった。初陽を見たこの瞬間、心の奥底に隠していた恐怖が、ようやくじわじわと溢れ出してきた。
初陽はぼんやりと我に返り、可美だと気づくと、彼女の背中を優しく叩いた。
「何泣いてるの?私、死んでないよ……」
「うぅ……初陽、心配で死にそうだったよ。一体どんな鬼畜があなたたちを殺そうとしたの?もし誰だか知ったら、包丁持って切り刻んでやるわ!」可美はまた少し泣き声を上げ、目頭の涙をぬぐうと、憤慨して歯を食いしばった。
初陽の沈んだ心は、可美のこの言葉で少し軽くなった。
彼女は気持ちを引き締め、口元を緩めて微笑んだ。「うん、あなたが一番強いよ、私のお姉さま。いつか本当に包丁を持って誰かを切り刻める日が来たら、その時にまた言ってね。」
「えっ、初陽、信じてくれないの?」
「信じてるよ、お姉さま。今はとても疲れてるし、お腹も空いてるし、寒いし、眠いから、ホテルに戻ろう……」初陽は軽く可美を押しのけ、笑いながら言った。
可美は慌てて飛び上がり、自分の頭を叩いて悔しそうに言った。「あぁ、私ってバカ!私が悪い、私が悪い。早く行こう。そういえば、星野社長はどうなの?」
星野寒の名前を聞いた途端、初陽のようやく浮かんだ笑みが、唇の端で凍りついた。
彼女の瞳の光が暗くなり、先に立ち上がって路肩に停めてある可美の車に向かい、無言で後部座席に座り込み、両腕をきつく抱え、ドアの窓際に寄りかかって目を閉じて休み始めた。
可美はその場に立ち尽くし、やっと後になって気づいた。自分は今、触れるべきではない人の名前を出してしまったのかもしれない。
でも、彼女にはどうしても理解できなかった。星野社長は初陽にあれほど尽くし、命さえ懸けているのに、なぜ初陽は無関心なのだろう?
石ころでさえ、星野社長のような世界に二つとない素晴らしい男性に温められるはずなのに、なぜ初陽は少しも心を動かされないのだろう?