美人は数多く見てきたが、このような清冷で神秘的な雰囲気を持つ女性は、目の前にいる彼女だけだった。
彼女は霧のように、雲のように、儚くて捉えどころがなく、確かに目の前にいるのに、まるで千里の彼方にいるかのようだった。
沢田鶴は初陽を見つめ、一瞬我を忘れたかのように、魂が九天の外へと飛び去ってしまったようだった。
初陽は沢田鶴を一瞥し、嫌悪感を露わにして眉をひそめ、彼の横をすり抜けてソファに横たわる女性の傍に行った。
女性はすでに気を失っていたが、体中の青紫色の血の滲んだ傷跡に、初陽の胸の内の怒りが燃え上がった。
彼女は自分のコートを脱ぎ、かがんでそっとほぼ裸同然の女性の体に掛けた。
本当に絶望を経験した人こそ、絶体絶命の時に誰かが手を差し伸べてくれることを最も渇望するものだ。
時に、ほんの少しの温もりが、一人の魂を救うことがある。
一人一人の命は、尊いものだ。
たとえ体を売って生きる女性であっても、彼女には自分の尊厳と譲れない一線がある。
「広田さん、彼女を外に連れ出して、病院に送ってください…」初陽は目の奥の怒りを抑え、広田崇を一瞥して言った。
広田は頷いて応じ、二人のボディガードを呼び入れ、その女性を運び出すよう指示した。
沢田鶴はしばらく呆然としていたが、ようやく我に返った。
彼は顔の凶暴さと狂気を一変させ、かがんでティッシュを取り、顔の血を拭き、少し乱れた服装を整えてから、初陽に向かって手を差し出し、友好的な態度を示した。
「失礼ですが、こちらの方は?」
沢田鶴は広田崇を知っていた。広田のような人物が彼女の指示に従うということは、この女性はきっと並の人物ではないだろう。
一目で彼女に心を奪われたが、身分の違いから、越えてはならない一線があることを知っていた。
結局、彼女の身分は、これらの身分の低い女性たちとは違うのだから。
初陽は嫌悪感を露わにして顔をそむけ、沢田鶴を見ようとしなかった。
今の沢田鶴は、人間らしい姿で、紳士的な態度を完璧に演じていた。
実際、華やかな外見の下には、汚れた醜い心が隠されていた。