第272章 本当に偽善的で作り物

初陽の心はドキリとした。彼女は足を止め、優奈の方を見た。

「一体何があったの?」

優奈は覚悟を決めたように、豆をこぼすかのごとく、ぺちゃくちゃと事の顛末を話し始めた。

「さっき可美がドアの前であなたを待っていたんだけど、春木錦があなたより先に到着して、可美を見かけたの。二人は昔の恨みで言い争いになって。可美が何か言ったのか、錦を怒らせてしまって、彼女は部下に命じて可美の顔を思いっきり平手打ちさせたの。可美が仕返ししようとしたけど、錦はボディガードを連れていて、そのボディガードが可美の手を掴んで、乱暴に彼女を投げ飛ばしたの。今、可美は顔がまんじゅうみたいに腫れているだけじゃなくて、腕や膝にも擦り傷ができてるわ」

初陽は大きく息を吸い込み、怒りが胸の中で抑えきれずに燃え上がった。

一度また一度と、錦はますます横暴になっていた。

優奈は普段可美とよく口喧嘩をしていたが、二人は喧嘩するほど仲が良く、喧嘩しているうちに友情が生まれていた。

彼女は真っ赤な目で、恨めしそうに唇を噛みながら続けた。

「私はその時撮影現場にいて何が起きたのか分からなかったの。可美が顔を押さえながら入ってきて、かすれた声であなたを迎えに行くよう頼まれたの。もし私がその場にいたら、絶対にあの春木錦という女の醜い顔を引き裂いてやったわ。人気者になったからって、完全に調子に乗ってるの?最初、可美がどれだけ心血を注いで、少しずつ彼女を売り出したか。今や彼女は誰もが憧れる大スターになって、まず可美を蹴落として、マネージャーを変えただけじゃ足りなくて。今度はこんな風に恩を仇で返して可美をいじめるなんて、彼女には可美に対する感謝の気持ちが少しもないの?」