藤原柚葉は人探しに失敗して、怒りを抑えきれないまま木村邸へ戻り、ひとりで苛立ちをぶつけていた。
木村伊夜はゆっくりと花壇から立ち上がって、体についた花びらや葉をそっと払いながら、鼻歌を歌って庭園をあとにした。
邸宅から抜け出す前、つまり木村凪咲に薬物を注射する時に。
彼女はさりげなく凪咲のポケットから、暗証番号不要の無制限ブラックカードを取り出していた。
「これと、あとこれも全部、包んでちょうだい」伊夜はショッピングモールで湯水のようにお金を使い、あっという間に多くの国際ブランドの買い物袋を手に提げていた。
他人のお金を使って、その人を泣かせればいい。
どうせ、伊夜は凪咲のことなど気にも留めていない。
更衣室で、彼女は宵月司星の白いシャツを脱ぎ、丁寧に包み込んだ後、可愛らしいワンピースに着替えた。
鏡の中の彼女は、黒髪が滝のように流れ、肌は雪のように白く、整った卵型の顔に魅惑的で美しい五官が描かれていた。特にあの輝く桃花のような瞳は、魂を奪うほどだった。
「私、本当に18歳に戻ったんだ!」
伊夜のピンク色の唇が軽く弧を描き、花のような笑顔は息を呑むほど美しかった。
彼女は一刻も早く司星の元に戻りたかった。
転生のチャンスを活かして、彼を一生守り抜きたかった!
「お母さん、司星……あなたたちの仇は必ず取ってみせる」
伊夜は鏡の中の自分を見つめ、思わず手を伸ばし、首元に掛けた転生と共に蘇ったキャッツアイのネックレスに触れた。
蜜色の天然キャッツアイが透かし彫りのプラチナ模様に埋め込まれ、翼の形をしており、高価で精巧だった。
「木村凪咲、今世では、私の全てを少しずつ必ず取り戻してみせる!」
彼女は突然そのペンダントをぎゅっと握りしめ、波光を湛えた瞳は、かつてのように輝き、星のように、真珠のように、無限の光を放っていた。
魅惑的で美しい顔には、頑固さと不屈の精神が満ち溢れ、岩のように、もう誰にも砕かれることはなかった。
……
安城。
薔薇園。
伊夜は邸宅の外に立ち、豪華で贅沢な洋館を遠くから眺め、庭の噴水のさらさらという水音に耳を傾けていた。
彼女がためらっていると、誰かに押されてよろめいた。
「こんな貧相な格好で、よく若様の前に現れる勇気があるわね。一発で落とされるのがオチよ」
派手に着飾った女性が赤い唇を尖らせ、軽蔑的に伊夜を一瞥した。
伊夜は視線を向け、その女性を観察した。
「羨ましがるのは勝手だけど、私は松田家の令嬢なの。このブランドの数々、田舎育ちのあんたに見分けがつくはずないわよ。ほら、このバッグはLVの限定モデル。服も、パリコレで出たばっかりの新作なんだから」
松田は高慢なアヒルのように、全身の宝石や装飾品を見せびらかし、軽蔑的に伊夜を見下ろした。
「忠告しておくわ、さっさと消えた方がいいわよ!若様のそばにいられる女性は、私のような名家のお嬢様だけなの……」
「へぇ、名家のお嬢様ね」微笑して言った。「夜のお店から逃げ出してきた女じゃないといいけど」
「あなた……」松田は声を尖らせ、細い指で伊夜を指差し、激怒していた。
伊夜は無関心に彼女を見つめ、「田舎育ちの女として、ひとつ忠告してあげる」
彼女は優雅に一歩前に進んだ。
細い指先で松田のドレスを摘み、かなり嫌そうな様子で、連続して後ろに下がり、首を振った。
「うーん……汗臭さがすごいわね。お風呂、ちゃんと入ってきたら?」