木村伊夜は自信を持って赤い唇を上げた。
彼女は少しあごを上げ、手にしたマイクをしっかりと握り、秋山君を見つめた。「もし、私がステージに上がって、ポールダンスよりも熱狂的な歓声を得られたら、いくらもらえるの?」
秋山君は少し軽薄な様子で伊夜を見つめた。
バーがどんな場所か、彼ほど知っている人はいない。
ここで歓声を勝ち取る方法はとても簡単だ。それは服を脱ぐこと、着ているものが少なければ少ないほどいい。
「意外だな、若いのに随分オープンなんだね」秋山君は伊夜を見回し、彼女のスタイルには見どころがあると感じた。
もし本当に脱ぐ気があるなら、歓声は少なくないだろう。
伊夜は秋山君が誤解していることを知っていたが、気にしなかった。「見ていてよ」
言い終わると、彼女はステージに向かって歩き出した。
ダンサーは自分の場所を奪おうとする人が来たのを見て、より熱烈なダンスを始め、さらに一枚服を脱いだ。
「脱げ!脱げ!もっと脱げ!」
周りからの野次が耳をつんざき、伊夜は思わず手を上げて耳をこすった。
「もう、みんなったら嫌ね!これ以上脱いだら何も着てなくなっちゃうわよ。誰か責任取ってくれるの?」
ダンサーは自分の肩ひもをいじり、時々下に引っ張って、魅惑的な景色をちらりと見せ、媚びを売るように首を振り、色っぽい目で客を誘惑した。
客の熱気が最高潮に達したとき、秋山君は指を鳴らした。「あのダンサーを下ろせ」
バーテンダーはうなずき、すぐに指示しに行った。
彼はダンサーの耳元で何かささやくと、ダンサーの表情が一変し、不満そうに秋山君を見た。
秋山君は薄い唇を少し上げたが、目は冷たいままだった。
「ふん、安っぽい女!」ダンサーは不満そうに足を踏み、伊夜をにらみつけてからステージを去った。
バーテンダーが彼女の前に来た。「木村さん、どうぞ」
伊夜は少し微笑み、ステージの中央に向かい、マイクをスタンドに取り付けた。
ダンサーは観客の間に立ち、伊夜を憎々しげににらみつけた。
彼女は、この女がどこまで脱ぐ勇気があるのか見てやろうと思った。よくも彼女の仕事を奪いに来たものだ!
「皆さんに、歌姫星夏が最優秀金曲賞を受賞した作品『芝居』をお届けします」