司星は私のことを愛してくれなくなった

杉本裕子はすぐに小走りで追いかけた。「星夏、あなたの歌、実際どうなの?私、聴いたことないんだけど……」

その言葉を聞いて、木村伊夜はピタリと足を止めた。

彼女は振り返り、裕子に近づくと、神秘的な様子で言った。「私は川崎凛香より星夏に似た歌が歌えるわよ。信じる?」

裕子:「……」

彼女は両手を腰に当て、あきれたように目を白黒させた。

歌姫星夏みたいに歌えることがそんなに素晴らしいことなの?女神の声は確かに天籟だけど、歌手はそれぞれ自分の特徴を持つべきじゃない?

「安心して、私はただ軽く引き受けただけよ」

伊夜は裕子の肩を軽くたたき、その花のように明るい笑顔は、また何か悪だくみを思いついたかのようだった。

裕子は彼女をじっと見つめた。

視線を戻し、また彼女を見つめた。

「どういう意味?」彼女は少し混乱していた。「もしかして今夜、星元に行かないつもり?」

「行くわよ、もちろん行くわ!」

伊夜は狡猾な笑みを浮かべた。「でも……私は凛香と北村美晴のために特別なプレゼントを用意したの!」

裕子は疑問に思いながら彼女を見つめた。

しかし伊夜は指を唇に当て、秘密を守るように目を瞬かせただけで、何も明かさなかった。

放課後、二人の少女は一時的に別れた。

伊夜は一度薔薇園に戻り、星夏のマスクと服をバッグに隠し、星元KTVへ向かう準備をした。

「木村さん、今夜はご自宅で食事されないのですか?」

山崎執事は彼女が出かけようとするのを見て、丁重に前に出て尋ねた。確認しておけば、若様にも報告できる。

「ええ、宵月司星に伝えておいてください。今夜はクラスメイトと集まって、星元KTVにいるわ」

伊夜はうなずき、言い残すと薔薇園を後にした。

山崎執事はすぐに司星にメッセージを送り、この件について詳細に報告した。

「司星ちゃん、今夜は人家とゼロ度に飲みに行こうよ〜」

工藤朔空は媚びるように司星の側に立ち、あとは直接彼の太ももに座るだけという勢いだった。

司星は気づかれないように椅子を横にずらし、朔空はよろめいて彼の方へ倒れかかった。

しかし男は手を伸ばして彼を止めた。「消えろ」

彼は毎日自分の前でゲイを演じるこの男を解雇すべきかどうか考えるべきだろう。

「えーん、司星ちゃんは人家のこと愛してくれなくなったの」