宵月司星は片腕で木村伊夜の体の横に支え、もう一方の手で彼女の顎を持ち上げた。彼の薄い唇が軽く上がり、目尻が少し吊り上がり、妖艶な様子で、まるで獲物を誘惑するかのようだった。
伊夜は唇を尖らせ、彼を軽く押しのけながら言った。「何よ、そんなことして...私まだ病気なのに...」
病気の間に彼女を攻略しようというつもりなの?
彼女が回復したら、今度は彼を寝かせてやる、仕返しだ!
「お前が病気でなければ、こんなに簡単に見逃すと思うか?」司星は暗い眼差しで彼女を見つめた。
その整った顔には「欲求不満」の四文字が書かれているようだった。
それを聞いて、伊夜は悪戯っぽく微笑んだ。
彼女は突然蓮のような腕を伸ばし、彼の首に巻き付け、体を起こして男性の唇に軽くキスをした。
「ちゅっ〜」伊夜は唇を舐めた。
司星の瞳の色が深まり、彼は燃えるような目で下の女性を見つめ、自分の体の変化に気づいた。
彼は彼女の耳元に口を寄せ、罰を与えるかのように彼女の耳たぶを軽く噛んだ。「お前が回復したら、お前を頂く」
伊夜は舌を少し出した。
どうせまだ病気だから、今は少し生意気でもいいでしょ!
司星はベッドから降り、伊夜の布団をきちんとかけた後、身をかがめて彼女の額に優しくキスをした。
「寝なさい。具合が悪くなったらいつでも呼んでくれ」
伊夜はニワトリのようにこくこくと頷き、明るく笑って、そして司星を寝室から追い出した。
しかし、ドアが閉まるとすぐに、少女は突然体を起こし、大量の血痰を吐き出した。「ごほっ...ごほごほ...」
伊夜はシーツをきつく握りしめ、その赤い色を見つめながら、顔色は恐ろしいほど青ざめ、表情は緊張と重々しさに満ちていた。
彼女は目を伏せ、右手の中指にある婚約指輪が、まばゆい銀色の光を放っていた。眩しいけれど、それは彼女の心を痛く刺すようだった...
伊夜の手は少し震えながら、ベッドの横に置いてあった携帯電話を取った。彼女は息を切らしながら、苦しそうに言った。「斗真...明日...病院に...付き合って...」
もう行かなければならない、これ以上待てない。
彼女は完全に回復したい、そうすれば司星の側に立つ資格ができ、彼の願いを叶えることができるのだから。