これは歌姬のチームだよ

「また何を考え込んでるの?」

木村伊夜は杉本裕子の頭をコンコンと叩き、困ったように彼女を見つめた。「芸能界で噂が立つなんて、よくあることじゃない?...実際はメディアのデタラメよ」

裕子は無邪気に頷いた。

とにかく、星夏は楽しそうに見える...何はともあれ、星夏が幸せならそれでいいんだもん!

...

週末は補習がなかった。

伊夜は裕子を音声ハウスに誘った。

音声ハウスは街の中心部に位置し、安城で最も専門性が高く、最高のサービスを提供する音楽プラットフォームだ。最高音質のレコーディングスタジオ、練習室、そして一流の音楽チームを備えている。

「星夏、どうしてこんなところに連れてきたの...」

裕子は伊夜の服をつかみながら、後ずさりした。「ここの使用料、私たち払えないよ」

ここは音声ハウスなんだよ...

中には音楽界のトップクラスの人材ばかりで、音楽界のスターたちが専属で使う音楽ビルだ。

「心配しないで、私の知り合いがここにいるの。直接会いに行けばいいだけよ、無料だから」

伊夜はウインクして、何も考えずに裕子を音楽ビルの中に引っ張り込んだ。

彼女はすでに有名な音楽プロデューサーと事前に約束していて、今日二人の友人が助けを求めに来ると伝えていた。

「お客様は...」

受付の女性は二人を見て、見覚えがないようで丁寧に尋ねた。

「こんにちは、私たちは井上拓也先生のお友達です。予約してあります」伊夜が進み出て答えた。

それを聞いて、裕子の目は飛び出しそうになった。

なんだって...誰...井上拓也先生?

歌姫星夏の専属音楽プロデューサー、井上拓也!

「お名前は?」

「木村と申します」

受付の女性は下を向いて確認し、確かに予約があることを確認すると、二人に道を案内した。「木村さん、こちらから22階へどうぞ。井上先生のアシスタントがエレベーターホールでお待ちしています」

伊夜はお礼を言った後、裕子を連れてエレベーターに乗り込み、22階のボタンを押した。

裕子はまだ呆然としていて、エレベーターの壁に映る景色をぼんやりと見つめていた。「星夏、私、夢見てないよね?」

伊夜は手を伸ばして彼女の頬をつねった。

裕子は抵抗して彼女の手を払いのけ、口をとがらせた。「痛いよ!」