「それでは、最後の出演者をご紹介します。声楽科18年度生の杉本裕子さんです!」
司会者がアナウンスした後、サイドステージへと戻っていった。
野外劇場の照明が急に暗くなり、神秘的な雰囲気が作り出された。観客席からはどよめきが起こった。
音楽がゆっくりと流れ始め、照明も徐々に明るくなっていく。
逆光が柔らかな光の輪を照らし出し、人影のシルエットを浮かび上がらせる。そしてスポットライトが落ち、淡いピンクのワンピースを着た裕子が、観客の視界に徐々に現れた。
少女はマイクを握り、三日月の小道具の上に座り、まるで天使のように清純で甘く、そして歌声が溢れ出した。
「微光、微光、微光、
一筋の三日月に夢を乗せて;
星々、星々、星々、
青い髪に若き日の願いを編み込んで……」
歌は最初、優しく美しく、少女の憧れと希望に満ちた青春の活力を含んでいた。クライマックスでは情熱的になり、高らかで美しい声が強い貫通力で会場全体の観客に感動を与え、感情を揺さぶった。
「この娘は、やはり素晴らしいな……」
井上拓也は顎に手を当て、舞台上の裕子を非常に感心した様子で見つめ、満足げに頷いていた。
木村伊夜は目を閉じ、聴覚の饗宴を楽しんでいた。裕子は確かに爆発的な力を持っており、彼女を失望させることはなかった。
「ありがとうございました……」
音楽が徐々に終わりに近づき、裕子はその世界に浸っていた。彼女はゆっくりと目を開け、最後の音の余韻が消えるまで、感情を込めて、深々と一礼してから舞台を後にした。
客席からは轟くような拍手が沸き起こった。
「耳が妊娠しそう!これはあまりにも素晴らしすぎる!反則レベルだよ!」
「これは何の曲?なんで今まで聴いたことないんだろう!」
観客席からは様々な声が上がり、ほとんどの人が裕子の歌に感動し、まるでファンになったかのように熱狂していた。
杉本唯奈の表情は非常に険しかった。
彼女は嫉妬と悔しさを隠せず、舞台袖を見つめていたが、その少女はすでに姿を消し、舞台を去っていた。
「杉本さんの妹さんは、芸能界に入っていないにもかかわらず、姉であるあなたよりも一枚上手のようですね」
伊夜は目を開け、興味深そうに唯奈をからかい、唇の端には少し遊び心が見えた。
唯奈は表情を引き締めたまま、何も言わなかった。