私はただ宵月司星を見に行きたいだけ

吉田龍一の瞳が急に沈んだ。

彼は木村伊夜が泣くのを見たことがなかった。自分の心臓病に直面しても、彼女はいつも強く微笑み、彼の前で跳ねながら「龍一お兄さん、見て、私元気でしょ！」と言っていた。

しかし今、彼女は別の男のために泣いていた……

龍一の体は硬直し、しばらくして、ようやく手を上げて彼女の涙を拭った。「わかった」

本当に馬鹿な子だ……

自分の命が危ないというのに、まだ他人のことを心配している。

そのとき、河野旭陽が黒田隼人を連れて病室に到着した。杉山由夏と斎藤斗真は宵月司星に見つからないよう、病院を一周してから戻ってきた。

「患者を刺激するなと言ったはずですが？」

黒田はすぐに木村伊夜の検査を行った。心音の雑音が非常に明らかで、もはや腫瘍が破裂しなければ大丈夫という心臓ではなくなっていた。

伊夜は目を細めて微笑んだ。「先生、彼のせいじゃありません」

さっきは自分が焦りすぎて感情的になっただけで、本当に龍一とは関係ない。

黒田はため息をついた。「木村さん、このように自分を大切にしないなら、私たちも手の施しようがなくなります」

伊夜の表情から笑みが一瞬凍りついた。

すぐに彼女は唇を曲げ、明らかに無理して作った笑顔なのに、とても自然に見えた。「わかりました、ありがとうございます」

宵月司星さえ無事なら……

今世は、自分の命を彼への償いとして捧げよう。

「ゆっくり休んでください。時々外に出て歩くのは構いませんが、激しい運動は絶対にダメですよ」

黒田は諦めたように伊夜を見つめ、彼女が何か自分で成し遂げたいことがあるようで、治療に協力したがらないと感じた。

伊夜は軽く微笑んで頷いた。「はい」

黒田は病室を出て、看護師に二、三言指示を出した。斗真はすぐに温かい水を差し出した。「喉、渇いた？」

「ちょっとね」伊夜はまばたきした。

彼女は素直に水を飲み、おとなしくお粥も全部食べ、それからベッドに戻って、大人しく療養した。

伊夜の呼吸は次第に安定し、彼女は深く眠ったようだった。寝顔は穏やかで、磁器の人形のように愛らしく、思わず愛おしく感じさせた。

「吉田若様、お休みになってはいかがですか」

斗真は心配そうに彼を見た。「伊夜も目を覚ましたし、大丈夫です。夜は私たちが見ていますから」