辺境の流蛇町

葉黙に蹴られた若者は、飛ばされてゴミ箱の上に落ちた。鼻と口から血を流していなければ、自分から座ったように見えるかもしれない。

葉黙の動きは即座に全員の注目を集め、電話を切ったばかりの中年男性も急いで振り向いた。振り向くと、すぐに後ろの泥棒に気付いた。しかしその泥棒は中年男性に見つかっても全く動揺せず、指の間に挟んでいたカッター刃を収めると、近づいてきた他の二人の若者と共に葉黙を睨みつけた。

葉黙にゴミ箱に蹴り込まれた若者を含め、合計四人の集団だったとは。

「このガキ、死にてえのか。やれ、ぶっ潰せ」ナイフを持った若者が怒鳴ると、先頭を切って葉黙にかかってきた。残りの二人も躊躇なく葉黙に向かって突進した。ただゴミ箱の上に座り、顔から血を流している男だけが、心の中で恐怖に震えていた。

彼は自分がどうされたのかを、すっかり理解している。この若者に顔を蹴られ、思わず宙を舞ってゴミ箱の上に座ることになった。この想像もつかない出来事で、彼は何かの力で持ち上げられたかのように感じた。もし葉黙が胴体を蹴って飛ばしたのなら、ここまで恐ろしくはならなかっただろう。

彼はすぐに気付いた。この若者は自分たちが手を出せるような相手ではない。だが仲間を止めようとしても既に遅い。仲間たちは突っ込んでいってしまっていた。

中年男性は状況を理解したようだ。この若者は泥棒が自分の財布を盗むのを見て、泥棒の仲間に報復されているのだろう。助けに行きたい気持ちはあったが、自分は格闘技を知らない。警察に通報しようと思った時、信じられないことが再び目の前で起きた。

その若者が再び蹴りを放ち、ナイフを持った男を同じように飛ばした。しかも、そのナイフは何故か彼自身の足に刺さっていた。それだけでなく、ナイフを持った男が飛ばされた先は、ちょうどゴミ箱の上にいた男の頭上だった。

その後の彼は、この若者が身を翻して旋風腳を繰り出し、残りの二人の若者を、自分の財布を盗もうとした若者も含めて、全員一緒に飛ばすのを目にした。バキッという音が二回鳴り、何が蹴り破られたのかは分からないが、二人の泥棒は悲鳴を上げ、同じゴミ箱の上に飛ばされ、四人で人だかりを作ってゴミ箱を倒し、ガラガラという音を立てた。