しばらく沈黙した後、葉黙は提案した。「卓さん、信じてくれるのなら、住所を教えてください。こっちの用事が済んだら、お宅の息子さんを診に行こう。俺なら治療できるかもしれない。それと、一つ言っておくが、あなたの言う黒紫根は、その症状の治療には効かない。あの漢方医がどこで聞いたかは知らないが、それは絶対間違ってた」
「なっ…」驚きの声を上げ、卓愛国は喜色満面で葉黙の手を掴んで確認した。「葉くん、今の話、私の息子を治療できるって、本当ですか?」
葉黙は頷いた。「見込みは高いと思う」
「もちろん君を信じますとも…」あまりの興奮で言葉がままない卓愛国は、急いで名刺を取り出し、葉黙に渡した。「うちの住所と連絡先、携帯番号も全部書いてあります。よろしくお願いします、葉くん」
彼は葉黙が嘘を言っているとも思わなかった。今の葉黙の神業のような技を見たからというだけでなく、あれを見ていなくても、葉黙は大言壮語を好む人ではないと感じていた。また、葉黙との付き合いは長くないものの、彼は葉黙という人物が落ち着きがあって、信頼できる上、付き合う甲斐のある友人だと感じたからだ。
葉黙は名刺を見て、頷きながら言った。「ただし、今は燕京には行けない。おそらく半年、あるいは一年後になるでしょう」葉黙はもちろん知っている。この時期に燕京に行けば、自ら罠に飛び込むようなものだということを。
「構いません。葉くんが覚えていてくれさえすれば」卓愛国は少しも不快な様子を見せず、むしろ非常に喜んでいた。たとえ「黒紫根」で息子を治療できたとしても、二、三年はかかるはずだ。しかも葉黙はあれが効かないと言っている。一方、葉黙の言い方では、彼が行けば解決できるはずだという。その違いを、彼にはよく分かっている。
葉黙が今すぐ行かない理由について、彼は何も考えなかった。一つは葉黙のような強者は、当然自分の事情もあるはずだ。二つは卓愛国も世の中を知らない人間ではない。葉黙がこんな辺境の国境地帯まで来ているのは、きっと何か事情があるのだろう。友人として、何でも詮索する必要はない。