「彼女を下ろして、俺が診てあげるから」葉黙も池婉青の太ももの銃創に気付いた。
盧琳は池婉青を背負ったまま少し歩き、人に気付かれにくい草むらに下ろしてから頼んだ。「葉さんにお任せしますね。私と郭起たちは死体の処理と戦利品の回収をしてきます。婉青の治療をお願いできますか」そう言うと、葉黙の返事も待たずに立ち去った。
葉黙は頷いた。この盧隊長は実に行動力がある人だ。治療の方法や回復の見込みも、池婉青本人の意向も確認せずに、その決めてしまった。
盧琳が去ると、池婉青は自分の足の傷を見てから、葉黙に振り向いた。傷の位置がちょっと微妙で、少し照れてるようだ。彼女は郭起の言葉を信じている。郭起が葉黙が治せると言うなら、きっと治せるはずだ。ただ、傷が太ももにあるため、ズボンを脱がせようとするのではないかと心配しただけ。
葉黙は池婉青の傷を見ると、やはり眉をひそめた。治療は簡単だな、位置が微妙すぎた。もしそこに手を当てたときに、この女性が何か言われたら気に障る。そういう割に合わない事はしたくない性格だ。しかも、この女性の表情は冷たそうで、そういうことを言い出しそうかもしれない。
葉黙が自分の傷を見つめ、眉をひそめて黙っているのに気づくと、池婉青は葉黙の気持ちを理解した。彼女は葉黙に好感を持つため、自分でも聞こえないほど小さな声で言った。「葉さん、治療をお願いします。私のことは気にしないで」
葉黙は少し驚いた。池婉青にどう伝えばいいか、迷っていたところ、彼女から治療を頼まれるとは思わなかった。表面は冷たそうに見えるが、実際は気遣ってくれる人のよづえ、彼はそんな池婉青に好感を持った。
治療が面倒に感じたのは、池婉青の傷が戦闘服でしっかり覆われていたからだ。郭起のように服がボロボロに破れているわけではないので、手のひらを打ち出すだけで、弾を押し出すことができない。池婉青の傷口は迷彩服にしっかりと包まれている。