恩返しだけだったのか

「俺が治療を行う。あの蛇は君たちを攻撃しないはずだが、くれぐれも気をつけろ」そう言うと、葉黙は池婉青を連れて素早くテントの中に駆け込んだ。

葉黙には知っている。あれが蛇ではなく、眦螂と呼ばれる生き物だった。外見は蛇に似ているが、四足が生えており、夜になると狼のように目が緑色に光る。眦螂は一般の人には見えないほどの、驚異的な速さを持っている。その上、皮膚も異常なほど硬く、普通の攻撃では傷つけることすらできない。しかし最も重要な点は、眦螂は極めて強い毒を持っており、一般の毒蛇は比べものにもならない。

成体の眦螂は翼も生えてくるが、あの眦螂は明らかにまだ幼年期だった。霊気の乏しいこの地球に眦螂がいることに、葉黙も驚いていた。

眦螂は一般人を襲うことはなく、霊気を持つ植物や物体にのみ反応する。この種の生き物は、特に霊気系の植物を呑み込むことを好むからだ。あの眦螂が攻撃してきたのは、葉黙が修行者であるためか、彼が持っている「紫心蔓」のためだったのだろう。

葉黙は急いで池婉青の上着をめくり上げた。こんな時において、他のことを考える余裕もなくなった。池婉青の背中には二つの小さな傷口があり、黒い毒血が一本の線となって上へと広がり、背中にはっきりと見えている。葉黙は真気を使って毒血を絞り出し、薬草を取り出してから、彼女が吸収しやすいように、真気を注ぎ込んだ。

毒は何とか抑えられたが、葉黙には分かっている。これは一時的な処置に過ぎず、完全に毒を除去できなければ、池婉青は一時間ももたないだろう。

しかし、何を使って彼女を治療するというのだろうか?葉黙は池婉青を裏返して自分の膝の上に座らせ、心の中で焦りながら方法を考えていた。

池婉青はまだ意識不明の状態で、顔を覆う灰色はそれ以上深まってはいないものの、やはり目立っている。

眦螂は霊気植物を食らうことを好み、あれに噛まれた人は毒に冒されるだけでなく、体の元気も消え失せる。生気のようなものだ。人の生気が消えてしまえば、たとえ毒を完全に除去しても、長くは生きられない。