北郡に近づくにつれ、穆國公府の一家はますます緊張していった。
穆國公府の女たちは、ついに穆紫萱に会えると思い、特に穆氏は、娘が北王府でどのように暮らしているのか知りたがっていた。
一方、穆國公府の男たちが緊張していたのは、北郡を通過するだけで、そのまま北方へ向かうのではないかということだった。
もし北郡を通過するだけなら、彼らは蠻族の領地に向かうことになる。大夏を裏切ることなど、彼らにはできるはずがなかった。
すぐに穆長天たちは気づいた。北郡に到着しても馬車の隊列は止まらず、北方へと進み続けていた。
これに穆長天の心は一気に締め付けられた。
まさか本当に蠻族のスパイなのだろうか?
すぐに穆長天は馬車から顔を出し、外で馬に乗っている錦衣衛に尋ねた。「お兄さん、我々はどこへ向かっているのですか?」
錦衣衛の兵士はすぐに答えた。「穆公、我々の目的地は雁の都です。到着まであと数日かかります。」
錦衣衛の兵士が具体的な目的地を告げたのを聞いて、穆長天はようやく少し安堵した。雁の都に向かうのだと分かったからだ。
その後、穆長天が頭を馬車の中に引っ込めると、穆興平が尋ねた。「父上、北王様は雁の都にいらっしゃるはずですが?あの謎の王様は本当に北王様なのでしょうか?」
穆長天は首を振り、こう言った。「彼のはずがない。雁の都は北郡で最も栄えた都だ。あの謎の王様が雁の都で我々に会うのは不思議ではない。」
穆長天は路辰がこれほど大きな勢力を持っているとは全く考えていなかった。結局のところ、路辰がどんな王様なのか、誰もが知っているはずだった。
数日後。
北郡、雁の都。
商人の一行に扮した穆府の馬車の列がゆっくりと雁の都に入ると、馬車の中の人々は窓の帳を開け、外の様子を観察し始めた。
この時、穆長天は目を閉じて休んでいたが、穆經武が声をかけた。「父上、雁の都に着きました!」
穆經武の声を聞いて、穆長天は目を開け、窓の外を見た。
雁の都は北郡で最も栄えた都とはいえ、一目見ただけで大夏の他の都との違いが分かった。
通りを行く庶民のほとんどが継ぎ当てだらけの服を着ており、それも非常に多くの継ぎ当てがある類のものだった。さらに多くの庶民は靴も履いておらず、裸足で歩いていた。