楚語琴は少し好奇心を抱いた。一体誰がこんな遅くに北王府の內院に侵入する勇気があるのだろうか。
以前、路辰を暗殺しようとした者たちは、今では遺体すら見つからない。そんな状況でも、まだ北王府に潜入して悪さをする者がいるとは。
楚語琴は白卿卿のいる中庭に入ると、すぐに假山の後ろに隠れ、その黒い影が一体何をしようとしているのか見守ることにした。
その時、黒い影は素早く白卿卿の部屋の扉を開け、中に滑り込んでいった。
提灯の光が暗すぎて、楚語琴はその人物の姿をはっきりと確認することができなかった。
楚語琴は思わず考えた。この人物は何故白卿卿の部屋に向かったのだろうか?
まさか白卿卿に何かするつもりなのか?
白卿卿とはいえ武士の一人であり、昼間に彼女の內力を感じ取った時、白卿卿はすでに九級武士であり、おそらく自分よりも実力が上かもしれないと感じていた。
この暗殺者が白卿卿に手を出すなど、自殺行為ではないか?
しかも白卿卿は今日王府に来たばかりなのに、どうして今日すぐに暗殺者が彼女を狙うのだろうか。
それとも、この暗殺者は部屋を間違えたのか?本来は路辰の部屋に向かうつもりが、白卿卿の部屋を路辰の部屋と勘違いしたのか?
楚語琴がそう考えていた時、部屋の中に蝋燭の明かりが灯った。
しかし、室内からは何の戦いの気配も聞こえてこなかった。
楚語琴は少し呆然とした。
これはどういうことだろう?
なぜ白卿卿はその暗殺者に手を出さないのか?
まさか彼と白卿卿は仲間なのか?
いや、正確には白卿卿がその人物と仲間だということか。
白卿卿はこれほど長い間離れていたのに、今日突然彼らを訪ねてきて、しかも帰らないと言い出したのは、確かに少し怪しい。
路辰の安全に関して、楚語琴は常に敏感だった。
王傾辭が路辰との関係を深めようと訪れる度に、彼女は王傾辭のことも警戒していたほどだ。
楚語琴は慎重に部屋に近づき、中の様子を窺おうとした。
その時、部屋の中では。
路辰が蝋燭を灯すと、床の上で座禅を組んでいる白卿卿が目に入った。
白卿卿は路辰がこんな遅くに自分を訪ねてきたことに困惑し、尋ねた:「王様、このような時間に私めをお訪ねになられたのは、何かご用でしょうか?」
路辰は笑いながら答えた:「特に用事がなければ、君に会いに来てはいけないのかな?」