第64章：あの頃を覚えて

あの年のことを覚えているだろうか。鈴木花和が県の文科状元として全国的に有名なS県の大学に合格した時、県のテレビ局まで鈴木のお父さんとお母さんのインタビューに来たのだ。

政府や県内の大企業が次々とやって来て、何万元もの祝い金を贈ろうとした。その額の大きさに、皆が羨ましがったものだ。

しかし残念なことに、テレビ局のインタビューも、贈られた祝い金も、すべて鈴木のお父さんとお母さんに断られてしまった。

鈴木のお父さんは、その場にいた全員の前でこう断った。「皆様のご厚意は心より感謝いたします。

娘が大学に合格したのは、人生のほんの始まりに過ぎません。これからの道のりはまだまだ長く、何が起こるかわかりません。だから、自慢できることなど何もありません。

このお金も、受け取ることはできません。

受け取ってしまえば、子供たちに勉強はお金のためだけにするものだと思わせてしまいます。

私が娘に伝えたいのは、勉強はお金のためだけではなく、自分の一生のためであり、どんな行動も自分で責任を取らなければならないということです。」

鈴木のお父さんのその時の断り方に、村人たちは惜しいと思い、愚かだと感じ、また鈴木のご両親があまりにも分かっていないと思った。

それは政府や大企業からのお金で、彼らにとっては九牛の一毛に過ぎないが、鈴木家にとっては巨額なのだ。

それを馬鹿みたいに断ってしまうなんて。

これから花和の大学の学費は途方もない額になるのに、どうやって工面するつもりなのか。鍋や釜を売り払うつもりなのか？それは自分で苦労を求めているようなものではないか？

実際、鈴木のご両親がそのお金を断った最大の理由は、娘が一生その良心の負債を背負うことを恐れたからだった。

彼らは花和にそのような重荷を背負わせたくなかったのだ。

だから、どんなに苦しく大変でも、自分たちの力で娘を大学に行かせようと思ったのだ。

当時、鈴木のご両親が花和を大学に行かせるのは本当に大変だった。特に一年目は、一年間の学費が数万元もかかり、家財道具を売り払っても足りなかった。

そこで、親戚や友人から借金をすることにした。

借金の際には、人々から嘲笑や皮肉を浴びせられた。

プライドや面子を保つために、当時自ら提供されたお金を受け取っていれば、今こんな苦労して借金する必要はないのにと言われた。