伊東明美はトマトに噛みついた。
ところが、舌がトマトの果汁に触れた瞬間、小さな一口が大きな一口に変わり、心の中の違和感も直ちに消え去った。
その後、彼女はむしゃむしゃと食べ始めた。
木野俊信は、母親に大きく噛まれたトマトを見て、突然悔しそうに「わーん」と大泣きし始めた。「うわーん、ママ、僕のトマトをいっぱい食べちゃった、いっぱい食べちゃった!」
息子の泣き声を聞いて、伊東明美はようやく気づいた。息子のトマトをほぼ半分も食べてしまっていたのだ。
自分の口はそんなに大きかったのだろうか?
しかし、伊東明美はそんなことを考えている余裕はなく、息子をなだめることが先決だった。
「はいはい、俊信、泣かないで。ママがもっと買ってあげるから、いい?」伊東明美は小声でなだめた。