林正彰は何も異常に気付かなかった。
彼は頷いて言った。「うん、イチゴを栽培する場所だよ。広瀬輝が言うには、その土地はイチゴ栽培に適しているから、将来的に観光とイチゴ栽培見学ができる観光基地にするつもりだって」
広瀬輝がその土地を手に入れたいのは当然で、良い理由と口実を見つけたのだ。
もちろん、彼も愚かにも露骨に自分の目的を暴露したりはしない。
だから、この中には多くの事情があり、彼も知らないことばかりだ。
もし暴露される日が来たとしても、広瀬輝には対応策があるはずだ。
折田辻司は急いた様子で言った。「君が言っているその場所は、安則郡の桃の里じゃないか?」
Z市でイチゴが最も有名な場所と言えば、桃の里以外にない。
彼はまさか、桃の里に注目していない短い期間の間に、誰かが桃の里に目をつけるとは思いもしなかった。