036 絵を描く

二見和利の心の中に芽生えた二見奈津子への罪悪感と二見華子への不満は、二見華子の涙によって消し去られた。

幸いにも、二見奈津子は既に血のつながった家族の態度など気にしなくなっていた。

彼女は伸びをして、時計を見た。佐々木和利は今日早く出かけ、朝食を食べていなかったので、自分のことだけ考えればよかった。

彼女は適当に顔を洗い、スリッパとパジャマ姿でバタバタと階段を降りていった。半分まで降りたところで、ドアの鍵が開く音が聞こえた。

「気をつけてください。静かに動いて、人を起こさないように」長谷川透の声だった。

二見奈津子は急いで階段を上がり、着替えた。

再び階下に降りると、長谷川透が二人の作業員に指示して、大量の物を運び込んでいるのが見えた。イーゼル、画用紙、絵筆など、完璧な一式だった。