佐々木和利は会議を終えたばかりの時、祖父からの電話を受けた。佐々木宗は興奮して叫んだ。「和利、和利!」
和利は携帯を耳から少し離し、眉をひそめて「おじいちゃん」と答えた。
佐々木宗は相変わらずの大声で「裕子がSNSを更新したぞ!三枚の絵をアップロードしたんだ!なんと二見奈津子の映画の宣伝用だって!奈津子の三作目の映画が始まるのか?」
「まさか裕子も奈津子のファンだったとは!奈津子は本当にすごいな!帰ったら奈津子の映画を全部見直すぞ。私の憧れの人が好きな映画なんだから、間違いないはずだ!」
「奈津子に手伝いが必要かどうか聞いてみなかったのか?ああ、二見家は本当に幸運だな。見つかった娘がこんなに優秀に育ったなんて!和利、私、奈津子に会いたいんだが、お前の彼女選びに影響しないかな?」
佐々木宗の声は小さくなり、口調も慎重な相談口調に変わった。
佐々木家と二見家には婚約があったが、和利の両親は二見華子をあまり気に入っておらず、和利の態度も相まって、婚事はずっと先延ばしにされていた。佐々木宗は子育ては常に民主的で自由だったが、二見家の祖父との約束はあるものの、孫を無理強いしたくはなく、ただ二見家の面倒を少し多めに見るだけだった。
奈津子が戻ってきてから、和利の母親は奈津子の印象を良く持っていたが、二見家は華子を和利と結婚させたがっていた。そこで長老たちは選択権を和利に委ね、二見家にも和利自身に選ばせると伝えたが、和利は二年間そのまま引き延ばした。
このため、祖父である佐々木宗も、和利の両親も、奈津子に近づきづらくなっていた。和利の選択に影響を与えることを恐れたからだ。結局は彼の一生の幸せにかかわることだった。
だから、裕子のファンとして、佐々木宗が奈津子に会いたいと思った時、和利の気持ちを気遣ったのだ。
「おじいちゃん、僕は奈津子と結婚しました。いつでも会えますよ」と和利は落ち着いて言った。
「ああ、そう。じゃあ理恵に奈津子との約束を取り付けてもらお...え?今なんて言った?もう一度言ってくれ?」佐々木宗は一瞬理解できず、理解した途端、声を張り上げた。
和利は再び携帯を耳から遠ざけた。
「和利、今なんて言った?もう一度言ってくれ!」佐々木宗は怒鳴るように言った。