060 奇想

感心はしたものの、井上は強調した。「今回は本気なんだ。両親も賛成してくれたし、好きな人なら家柄とか関係ないって。どうせ兄貴がいるから、兄貴が釣り合いのいい相手と結婚すればいいんだ。万が一のために、僕も先手を打って、早めに運命の人を見つけなきゃ。そうすれば、プレッシャーは兄貴の方にかかるしね」

佐々木和利は思わず彼を蹴った。こいつ、空気読めないな!これ以上続けば、もう助け舟を出すのはやめようと思った。

井上は不機嫌そうに黙り込んだ。

橋本は笑いながら言った。「和利、この前、君と幼なじみの人が空港でトラブルがあったって聞いたけど?」

佐々木和利は眉をひそめた。

橋本は彼の背中を叩いた。「心配するな。長谷川がきれいに処理したから、情報は一切漏れてないよ。たまたまその日雇われていたメディアの記者が、スクープを逃して嫌な思いをしたって愚痴ってるのを聞いただけさ。君の幼なじみ、やり方があまりよくないね!」

佐々木和利は眉をひそめながら言った。「言っただろう。幼なじみなんていない。もう二度と言わせるな」

「二見家のことですか?」林千代が会話に割り込んできた。

佐々木和利は不愉快そうな表情を浮かべた。「祖父と彼らの祖父が親しかっただけで、父の世代も私の世代も付き合いはない。幼なじみなんて言えるわけがない」

林千代は言った。「和利、言いにくいけど、適切な場で徹底的に否定しておくべきよ。そうしないと、二見家の娘さんが陰で皆を誘導して、あなたたちが幼なじみだって言って、あなたの名声に便乗してるわ」

佐々木和利は黙っていた。

関口は靴で彼の靴を軽く蹴った。「本当に彼女のことが好きじゃないの?それとも何か秘密があるの?」

佐々木和利は彼を睨みつけた。「君は私が——」

「あんな人間みたいだと思ってるの?」佐々木和利の言葉は急に方向を変えた。

関口の体も一瞬こわばり、すぐに言った。「違うならいいんだ」

二人だけが何を話しているのか分かっていた。

佐々木和利は深く息を吸い、橋本に言った。「君のルートを借りて、ニュースを流してくれないか」

橋本は首を傾げた。「どんなニュース?なんで私を通さなきゃいけないの?」

「自分の人間を使うと不自然になる。君のルートなら目立たないはずだ」佐々木和利は言った。