069 失態

井上邦夫は慌ててティッシュを差し出し、心配そうに尋ねた。「大丈夫ですか?」

藤原美月はティッシュを受け取り、軽く咳き込んだ。少し酔った顔は紅潮していた。彼女は軽く首を振って「申し訳ありません」と言った。

井上邦夫は安心して「ゆっくり飲んでください。急がなくていいですから」と言った。

藤原美月は「井上さん、ご心配なく。友達が迎えに来てくれますから。ご好意は嬉しいですが、結構です。ありがとうございます」と言った。

井上邦夫はようやく、なぜ藤原美月がこんなに大胆にお酒を飲めるのか理解し、心に小さな失望を感じた。

バーテンダーが急いでやってきて「藤原さん、二見さんが携帯に連絡が取れなくて、こちらに電話してきました。お酔いになっていないか確認してほしいとのことです。少し用事があって、すぐには来られないそうです」と言った。